原子力潜水艦シービュー号 (1965年) (創元推理文庫)

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1961年にアーウィン・アレンが制作し、アメリカ20世紀フォックスが配給した人類滅亡の危機に立ち向かう原子力潜水艦とその乗員たちの冒険を描いた空想科学映画『地球の危機(原題:Voyage to The Bottom of The Sea)』のノベライゼーション。
アーウィン・アレン、チャールズ・ベネット共同随筆による脚本を基にSF作家のシオドー・スタージョンがノベライズ。映画のヒットからテレビシリーズ化され、その人気から日本では映画公開後4年経って1965年に刊行されたのが本書。
 天才科学者のハリマン・ネルソン提督の設計した最新鋭原子力潜水艦『シービュー号』が北極海を試験航海中、突然世界中の空が赤く燃え上がるという事態が起きる。原因は地球を取り巻くヴァン・アレン帯の異常発火と判明、ネルソン提督は国連で開かれた緊急会義の席上で自説を唱え、ポラリスミサイルを打ち上げでヴァン・アレン帯を爆破、一気に燃え尽きさせる計画を提案するも自然鎮火説を唱える科学者勢の猛反対に合う。
提督は独自の判断でシービュー号を強行発進させ、艦長のリー・クレーンすら反対するのを押し切ってミサイル発射地点へ向かう。しかし、国連各国はその阻止に動き、加えてシービュー号の艦内でも何者かによる妨害工作が起きる中、地球焦土化は刻一刻に迫る。
映画はアーウィン・アレンらしい娯楽色が強く、深海に住む巨大イカや巨大蛸の襲撃、シービュー号を追跡、撃沈せんと魚雷攻撃を敢行する国連加盟軍の原潜を深海に誘導、圧潰させる(!)など冒険活劇映画としてドラマチック(滅茶苦茶でトンデモ)な展開。対してスタージョンのノベライゼーションではSFサスペンスの色が濃く、ネルソン提督の強引でマッドサイエンティストな横暴ぶりに困惑しつつも従うクルーの葛藤、シービュー号の強行を阻止するべく追跡してくる国連軍フリゲート艦とのチェイス、艦内での破壊工作によるサスペンスと全体に渡ってリアル指向で「大人向き」なストーリー展開となっている。
しかし、その演出故に登場人物の会話に用いられる比喩や言い回し、バン・アレン帯の存在と爆砕消火案の科学的解説など、とにかく冗長で物語のテンポが著しく滞ってしまい読み進めるのが非常に辛い。現代風に要約、校正し直すせばおそらく半分のページ数になろう事は50年以上も前のSF小説のありようの一つか。テンポは映画版の方に軍配。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノベライズ
感想投稿日 : 2013年9月25日
読了日 : 2013年9月25日
本棚登録日 : 2013年9月12日

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