政治の修羅場 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年6月20日発売)
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政治家・鈴木宗男氏の40年に渡る政治家人生を語り明かす実録・回顧録。

宗男氏の師である中川一郎をはじめ、田中角栄、福田赳夫、安倍晋太郎、金丸信、竹下登、小沢一郎、小渕恵三、田中真紀子、小泉純一郎…。さらには、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンまで。「今だから語ることのできるエピソード」がぎっしりと詰まっています。

「今の検察は正常ではない。すぐにマスコミへ情報を流し、一参考人に過ぎない政治家に嫌疑がかかっているという世論を形成するよう誘導するようになった」、「小選挙区比例代表並立制度になり、マニフェストが重視されるようになった今、候補者が独自のセールスポイントを作らなく(作ることができなく?)なったことも手伝って、専門知識の乏しい小粒な政治家ばかりになった」、「党内基盤の弱い政治家はマスコミを誘導して求心力を持とうと、過激なことを言わざるを得なくなる。しかし過激な弾を撃ち尽くしてしまえば、あとはジリ貧になるだけで続かない」、「政治とは歴史を作ることであり、そこに権力やポストが伴う以上は命がけで闘わなければならない」などなど…。タイトルどおり、数々の修羅場を経験した宗男氏であるからこそ、言葉の重みが違ってきます。

この本を読むと、田中角栄、中川一郎、金丸信から小沢一郎、小泉純一郎、さらにはプーチンにいたるまで、政治の世界が実に激しい権力争いであるか、垣間見ることができます。もちろん、何から何までぺらぺら話しているわけではありません。宗男氏のポリシーもあります、墓場まで持っていく話も当然あるでしょう。

小泉政権時代、マスコミは安直に「宗男VS真紀子」の構図をおもしろおかしく報道し、政治をまさに劇場型に変えてしまいました。「日本の総理大臣にもっともふさわしい人物が田中真紀子とされた時代」があったことを思うと、本当にゾッとします。佐藤優さんの本などを読めば分かりますが、検察やマスコミがいかに偏った情報ばかりを流していたかが分かります(今でもマスコミはまったく信用するに値しませんが)。

激しい「宗男バッシング」があった頃から10年以上が経ちました。その間に宗男氏は投獄を経験し、政権の中枢からはるか彼方にまで追いやられてしまいました。ただ、僕個人としては、宗男氏のような気骨のある政治家がもっと活躍してほしいと感じます。少なくとも、ロシアとのパイプ役として宗男氏を凌ぐ政治家は、現状、見当たらないでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 07.ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年7月27日
読了日 : -
本棚登録日 : 2013年7月26日

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コメント 1件

松村 訓明(まつむら のりあき)さんのコメント
2022/08/20

同感です。

日本の政界を見回してもロシアを相手に、熱い気持ちと胆力を持って交渉することができる政治家は鈴木さんの他にはいないと思っています。是非、佐藤優さんとタッグを組んで北方領土返還に向けて活躍していただきたいと思っています。ウクライナ侵攻によって、ロシア相手の交渉が怯んでいるようにも見えますが、北方領土は日本固有の領土ですから一刻も早く還していただく必要があると思っています。北方領土を返還してもらうことで満洲、樺太そして千島列島で当時のソ連軍に暴虐の限りを尽くされ、苦難と失意のうちに亡くなった方の魂が救われると思っているのです。

ありがとうございました。

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