実力も運のうち 能力主義は正義か?

  • 早川書房 (2021年4月14日発売)
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東大生の親の6割以上が年収950万円、大企業や官僚などエリート道に進む人は純粋な実力ではなく豊かで恵まれた環境があったからこそ。長いページを費やして語るがようは親ガチャですよねというか、新鮮味はない。メリトクラシーはリベラルを標榜したオバマが支持しその結果トランプ大統領を生んだという議論は興味深かった。持てるものと持たざるものの分断は日本でも拡大が進む。
しかしこのテーマには解決策がない。ハーバードの入学をくじ引きで決める日は来ないだろう。「労働を承認する」といっても、エッセンシャルワーカーであるスーパー店員やごみ収集員が高給取りの投資銀行の社員より評価されることはあり得るか。サンデルも投機に課税せよ、くらいしか策がないのか。「恵まれた側が功績のためではなく運だと謙虚に自認しよう」というが、それで社会は変わると思えず。
後書きの、メリトクラシーのメリットは顕在化した功績であるという点は重要だと思った。能力主義というと内在するポテンシャルのイメージが強い。「功績主義」は「能力主義」よりはましなのではないか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外
感想投稿日 : 2022年1月29日
読了日 : 2022年1月25日
本棚登録日 : 2022年1月25日

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