中央公論 2015年 01月号 [雑誌]

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1月号は昨年12月の発売なので、総選挙の直前で、その関連として、「永田町政態学34」が面白い・・・
なぜ、年内の総選挙だったのかについて、「首相の真の狙いは消費税増税を1年先送りするために、自民党や財務省などの増税派勢力を抑え込むことにあった」
麻生太郎、税制政調会長の野田毅、町村信孝党税調顧問、谷垣禎一幹事長、さらには増税へ向けて追加金融緩和を決めた黒田東彦日銀総裁への対策だと言う。「対野党という視点がほとんどない」という一般のマスコミ論調とは視点を変えた処が興味を惹いた。

山崎正和の「知識社会論的観点から戦後70年をみる」はなかなかの力作だ・・・
戦後の日本政府がいち早くアメリカ中心の西側陣営に立ち、新憲法を受容して戦中のアメリカの道義性を承認し、やがて西側諸国との単独講和に踏み切り、アメリカと安全保障条約を結ぶ事によって過去の戦争の清算をした。だがこの選択の代償も大きく、日本は世界で数少ない国内に東西対立を含む国家となった。東から分断された西ドイツが国内に共産党を持たず、冷戦対立を国内化しないですんだのとは大きな違いであった。また、ドイツは戦争責任をナチスとヒットラーに被せることが出来た。
日本の知識人、とりわけ大学とジャーナリズムの反体制勢力は強く、世論も少なからずこれを支持する趨勢を見せた。この知的反体制が成功しなかったのは、彼らが支持したスターリンのソ連と毛沢東の中国が皮肉にも、殆どファシズムの域に達していたからである。
また、戦後日本社会がポピュリズムを封じることが出来たのは、この時代の大部分を自民党という保守政党が支配し、しかも実質的には社会民主主義的な政策を堅持したからである。農民を優遇して豊かな村落を固め、高度累進課税を通じて企業家族の中に所得格差の溝を生じることを防ぎ、社会保障の充実も国民の階層分化を防いだ。
もちろんその背景には経済成長があり、再分配を許すパイの増大があったわけで、現在、経済のグローバル化のもとでその将来に暗雲が漂っていることは否定できない。・・・と、12ページに渡る堂々とした戦後の保守論は読みごたえがあった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年1月7日
読了日 : 2015年1月7日
本棚登録日 : 2015年1月7日

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