「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

  • ダイヤモンド社 (2017年2月16日発売)
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どうすれば、根拠のない通説にとらわれることなく、正しい判断ができるのか?そのカギとなる「因果関係」と「相関関係」の見分け方を、経済学の研究を踏まえ、解説する書籍。

「メタボ健診を受けていれば長生きできる」といった、根拠のない通説にだまされる人は少なくない。それは、因果関係と相関関係を混同しているからである。
①因果関係:2つのことがら(変数)のうち、片方が原因となって、もう片方が結果として生じた場合。
②相関関係:片方につられて、もう片方も変化しているように見えるが、原因と結果の関係にない場合。

2つの変数が因果関係か否かを確認するポイントは次の3つ。
①「まったくの偶然」ではないか。
②「第3の変数」(交絡因子)は存在していないか。
③「逆の因果関係」は存在していないか。
2つの変数が因果関係にある場合、①~③は存在しない。一方、相関関係の場合、①~③のうちいずれかが存在する。

因果関係を証明するには、現実と「反事実」(実際には起こらなかったシナリオ)を比較しないといけない。例えば「子どもにテレビを見せなかったから学力が高くなった」という場合、「その子どもがテレビを見た場合の学力」と比較する。

2つの変数が因果関係か相関関係かは、実験で明らかにできる。
・ランダム化比較試験:例えば、病気のネズミを「ランダム(無作為)」に2つに分け、投薬したネズミ(介入群)と投薬しなかったネズミ(対照群)を比較する。投薬したネズミの治癒率が高ければ、薬に効果があったといえる。
・擬似実験:政府の統計調査などの「観察データ」と「統計的な手法」を用いて、ランダム化比較試験を実施しているような状態を作り出す。

ジュエリーショップの例で説明しよう。全国にある店舗のうち、A地方の店舗は2015年に広告を出したが(介入群)、同じ時期にB地方の店舗では広告を出していなかったとする(対照群)。
A地方の店舗では、2014年12月には1000万円、2015年12月には1400万円の売上だった。一方、B地方の店舗では、2014年12月には600万円、2015年12月には800万円の売上だった。
広告を出したA地方の店舗では、2014年から2015年にかけて、売上は1400万円-1000万円=400万円増加した。広告を出していないB地方の店舗では、800万円-600万円=200万円増加。
この2地方の売上増加幅の差である400万円-200万円=200万円が、差の差分析によって得られる介入の因果効果ということになる。広告にかかるコストが100万円だったとしても、広告を出すことで200万円-100万円=100万円の追加的な売上が期待できるということになる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: MD
感想投稿日 : 2023年1月3日
読了日 : 2023年1月3日
本棚登録日 : 2023年1月3日

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