年下の彼氏 (キャラ文庫 ひ 2-7)

著者 :
  • 徳間書店 (2008年5月23日発売)
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本棚登録 : 250
感想 : 28
4

読み返すのは3回目くらいかな。なので初読の感想ではないですが、最初と同じところではっとしている気がします。とても好きな本。好きなのでうまく感想が書けません。
ゆっくりゆっくり進んでいく話。想いが通じ合うまではすんなりいくのですが、手にしたら判るけどBL小説にしては結構分厚いのです。通じ合った後を丁寧に描いてる作品。通じ合って終わり、じゃなくそこから始まる。
心理面が中心の話です。お互いに好きだと判ったところで、その瞬間から考えてる事が全て解るようになるわけじゃない。楓がずっと胸の奥底に抱えてきた諦観。物事は全て、いつか終わる。悲観しているわけでもなくただ淡々と事実として知っている。そのせいで、触れても好きだと言っても、楓自身に本当には触れられていないようなもどかしさを感じる鴻島。太陽のような鴻島と静かな楓。好き、がどうして届いている感じがしないのか。いつか終わる、が不安ではなく事実と捉えているのは。それは楓自身も気づいていなかった理由でした。自覚して、事実が不安に変わり失くす事を恐れ、漸く本当に感情を知る楓。こころの動きを本当に丁寧に描いています。だから、解らないところがないし、ひとつひとつに得心がいく。どういう意図からその言葉が出ているのかとか。よく「話し合えよそれで解決でしょ?」とイラっとする事があるのですが、言葉を費やさなくてはいけないと自戒したりしてて本当に痒いところがなくすっきり。
鴻島は年下の彼氏、大学生だけど自分をしっかり持っていて揺らがなく強く人の気持ちも汲めて、甘える素振りで甘やかす優しい青年。その器の大きさ包容力がとても素敵です。だけど楓からしたら子供なわけで、楓に「大丈夫」と言わせてしまう自分に苦しんだり。
まだ早いんじゃない?という楓に対して言う鴻島の言葉の説得力。成る程、と頷いてしまいました。そういう場面が沢山ある話。子供がした事への責任とか。どんなに大人びていても、責任は取らせてもらえない。一番は楓の妹の言葉ですが「きちんと愛させてほしい」「愛される責任」は何度読んでもはっとします。知っているのと受け取るのは全く違うのよって。
菱沢さんは文章に癖があるのですが、この作品の場合それが逆に良いと思いました。夜の重さや深さだとか幸せの哀しさだとか、表現の仕方がとても叙情的で。静かに胸に入り込んできて泣きたくなる。
挿絵。これは本当に穂波さんで良かった。ぴったり。他の人では考えられないと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: BL小説
感想投稿日 : 2012年2月23日
読了日 : 2012年2月23日
本棚登録日 : 2012年2月23日

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