江戸期に数多く存在した商売の種類やその有り様を、膨大な原典から採画し、簡単な解説を付した絵解き図。
300を超える種々の商いを、衣・食・住、薬・旅などの項目に大まかに分けて紹介している。
淡々と各商売を1~2ページで絵と文で説明する形式で、読み初めは途中で退屈するかな?と思ったが、いやいやこれがとてもおもしろい。
細かい分業がなされていたり、商売ごとに制服のように決まった服装があるものがあったり、かけ声に特徴のあるものがあったり、時代とともに消えていったものがあったり。
『誹風柳多留』等から取られた各商売を読み込んだ川柳も添えられ、イメージを掴む一助となっているのもよい。
初めから眺め、巻末の索引を見ながらまた見返す。
出典・参考文献が丁寧に記載されていて、その数に圧倒される。
自分だったらどの商売がいいかなぁ・・・? 適性は全くないと思うが、薬を売る客集めをしていたという「居合抜き」。これ、やってみたいなぁ。
やりたいというわけではないが、印象に残ったのは「鳥刺し」。将軍家の鷹に与える雀を捕る商売だが、なるほどそういう仕事もあったんだねぇ。何か、物語を感じる職業である。
「願人坊主・物貰い」の章は、金を乞うにもさまざまな工夫が凝らされていて、したたかというか生命力があるというか、何だかすごい。
江戸期の庶民のざわめきが聞こえてきそうな好著。
*元は青蛙房から出ていた本を、新装版として出版したものという。
*以前、北斎漫画の解説だったか、北斎が、コンパスに似た道具「ぶんまわし」を使っていたという話を読み、どんなものかなと思っていた。本書の「上絵(うわえ)師」の項にありました。「分廻し」と称し、竹製で一方に筆を取り付けて使用したとのこと。なるほど、コンパスによく似ている。
*「百獣(ももんじ)屋」の項。獣の肉で、牡丹は猪、紅葉は鹿だが、これは「牡丹に唐獅子」、「紅葉ふみ分け鳴く鹿の」から来ているとのこと。へぇぇ。こういう豆知識も楽しい。
- 感想投稿日 : 2012年6月4日
- 読了日 : 2012年6月4日
- 本棚登録日 : 2012年4月22日
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