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  • 白水社 (2016年11月10日発売)
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中国の小説家、閻連科の中編小説。
私はこれが最初の閻連科作品なのだが、一般的には閻連科は、反体制であるとか過激であるとか、どちらかといえば「狂暴」なイメージで語られる作家であるらしい。著者自身、あとがきでそう述べている。だがこの作品は、『愉楽』や『人民に奉仕する』といった「反体制」的な彼の「代表作」とは異なる趣きで、静かな余韻を残すものである。

大昔、日照りの続く村。種まきも終えてしまったのに、一向に恵みの雨は来ない。
村人は皆、村を見捨てて避難していった。
残ったのは「先じい」と目が見えない黒犬「メナシ」。
先じいは畑に1本のトウモロコシが残っているのを見つけ、これに賭けてみることにしたのだ。
72歳。新天地に辿り着けるかもわからない。何とかここで踏ん張ってみよう。
その日から、先じいとメナシの苦闘の日々が始まる。

村人たちの留守の家を回り、食糧を探す。
枯れかけた井戸に布団を下ろして水を吸わせる。
ネズミからトウモロコシを守る。
遠くに池を見つけ、水汲みに奔走する。
オオカミと対決する。
飢えと渇きに苛まれる先じいとメナシに、次々と困難が訪れる。

乾いた大地は、現実の世界のようでもあり、神話の世界のようでもあり、ファンタジーのようでもある。
色の付いた風。重さのある光。
人語を解す犬。押し寄せるネズミの大群。

雨は降らない。トウモロコシはまだ実らない。
先じいはついに最後の決断をする。
目の見えないメナシに、先じいは1つの提案をする。
1人と1匹の絆の強さに胸を打たれる。

世界は残酷で、でも美しい。
いのちは弱く、けれども強い。
世界各国語に翻訳されたという、普遍を湛えた珠玉の物語。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: フィクション
感想投稿日 : 2017年3月6日
読了日 : 2017年3月6日
本棚登録日 : 2017年3月6日

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