龍の棲む日本 (岩波新書 新赤版 831)

著者 :
  • 岩波書店 (2003年3月20日発売)
3.44
  • (6)
  • (9)
  • (24)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 124
感想 : 10
4

日本を囲む巨大な龍(大蛇、大魚)を描いた行基図「金沢文庫本<日本図>」の読解を通して、中世日本の<国土>観を考察した書。同地図や関連する行基図の丹念な解読、同時代の<国土>や龍にまつまる言説の集成から、日本を囲む龍が何を意味しているのかを解明する。
本書で紹介されている「金沢文庫本<日本図>」などの行基図では、日本の国土を取り巻く巨大な龍が描かれているが、本書はこうした龍を通じて当時の<国土>観を論じたものである。独鈷型としてイメージされた日本の形や、行基図に描かれた諸外国の記述、そして龍にまつわる数々の伝説(神の化身としての龍、龍の上に立つ聖地、龍の住まう龍穴など)を経て、著者は中世日本が「龍の棲む国土」としてイメージされていたことを主張する。そして国土を囲繞する龍は国を護る神の化身であり、これの頭を押さえつける鹿島神宮の要石は日本の国軸の一つであったとする。この龍は大蛇や大魚(鯰)としてもイメージされ、近世においては中世的<国土>観の衰退と共に大鯰へと収斂していくことになったと著者は述べているが、個人的にはその変容が何故・どのように起こったのかより詳細な説明が欲しかった。
本書で紹介される様々な伝説や解説は目で追っていくだけでも面白いものが揃っており、中世の宗教的世界観を知ることが出来る。個人的に特に興味深かったのは各地の龍穴伝承や日本各地を地下で結ぶ穴道の伝説で、中世の異界観に大いに魅かれた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 伝説
感想投稿日 : 2014年4月4日
読了日 : 2014年4月4日
本棚登録日 : 2014年3月26日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする