ハイパーハードボイルドグルメリポート

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2020年3月19日発売)
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本棚登録 : 1293
感想 : 122
5

うわ~!なに~もうこの本!
衝撃的におもしろかった!!

「ヤバイ国のヤバイ人たちは何を食べているのか?」
テレビ東京のディレクター・上出遼平さんが
ADもつけないで1人でカメラを持って取材するという番組のドキュメンタリーリポート

紛争が続く西アフリカのリベリア共和国
人を食べたことがあるという元少年兵を探して訪れ出会ったのは元放送局の廃墟に住む元国軍と反乱軍の兵士たちで…

日本でも人気の旅行先「台湾」
人骨で鍛錬する刀職人
そして台湾の黒社会を仕切るドンの食事とは?

ロシアの洞窟の家に住む夫婦
そしてカルト宗教と噂されるヴィッサリオン教の小さな村の人々の食事とは?

アフリカ東部のケニア共和国
ゴミ山に暮らすスカベンジャーたちの生活とその食事とは?

1つの国の取材記を読むごとに胸がざわざわする
ある時は、戦争とは何なのか?を思い
ある時は、貧困について考え
ある時は、生きることを哲学的に考え
その答えは永久に出ないだろうと思ったり…

「その人の価値感や正しいと思うことを他人が批判したり判断することはできない」と語るカルト村の人
幸せかと聞かれた時に「あなたに会えたから幸せだよ」と言うスカベンジャー生活の少年
「正しさが正義ではなく移ろいゆくことこそが真理」
自分の命を守るために自分の親に銃を向けた少年兵
みんな私たちと同じ人間
生きるという意味では同じでも
その人の人生と人生の哲学はみな違って深い

上出さんはこう書いている
カメラを通してその人の人生を覗き見ている…と

取材は暴力である
カメラは銃でありペンはナイフである
幼稚に振り回せば簡単に人を傷つける

取材活動がどれだけ社会正義に即していようとも
それが誰かの人生をねじ曲げるのであれば
それは暴力だと思っている
その正しさは取材活動の免罪符になるけれども
暴力であることから逃してはくれない。

おそらくマスコミの仕事をする人の多くは
この言葉のリアルな現場を体験して一度は葛藤していると思う。
そこを忘れるか大切にするかでそのディレクターの作るVTRは訴えてくるものが違う

上出さんのこの番組は見ていなかったのだけど
心の底から「見たみたい!」と思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年2月13日
読了日 : 2021年2月13日
本棚登録日 : 2021年2月13日

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