哲学者というのは、バートランド・ラッセルみたいな人のことをいうのだなと実感。というか、数学者なのだけれど。
『哲学入門』とは言いながら、彼の思考は、論理という頼りない光だけを手に、真っ暗な海を切り開いて進む船のよう。著者自身、この論理という道具が諸刃の剣であるということをもっとも自覚しながら、それでも、少なくとも「信じることのできる」方位を手探りで進んでいく。
何というべきか、この「誠実さ」に読み始めてすぐに心打たれた。
哲学=理屈っぽい、と誰もが思うのかもしれない。往々にして自分もそう感じる。でもそれは、予め自分の望んでいる結論に至るために都合のよいロジックしか用いない哲学者(というかソフィスト)の著作にしか当てはまらない。
ラッセルのような、哲学の領分を充分に弁えている哲学者の著作は、読んでいて本当に楽しいしスリリング。というのも、ラッセルは「何が真なるものであるか」という問いは差し置いて、「何がもっとも信じるに足るものか」という基準で議論を進めているからだ。これには目から鱗だった。
問題は真偽ではない。真偽は判定できないとしても、それでも信じることができるものがあるのかどうか。それを問うことこそが哲学の役割だったのだと気づいた。真偽は科学が証明してくれる、ある程度。
読書状況:いま読んでる
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カテゴリ:
哲学・思想・宗教
- 感想投稿日 : 2012年11月20日
- 本棚登録日 : 2012年11月19日
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