気分としては
(;´∀`)・・・うわぁ・・・
という感じでした。大英帝国様の絢爛にして優美かつ高雅な残酷さに気圧されそうです…。
イギリスは、アメリカ以前に世界の覇権を握り、「全世界の四分の一を手中に収めていた」大国でありましたが、この本は、そのイギリスが絶頂期を迎えるヴィクトリア女王時代の、初期から中期を扱ったものです。
19世紀のドイツに興味があったので、その潜在的なライバルであるイギリスはどんな状態にあったのか、というのが知りたくて読んでみました。
この「ヘブンズ・コマンド」の上巻では、奴隷制廃止、アフガンをめぐるロシアとの冷たい抗争、アイルランド飢饉、インドの植民地化などのイギリスの対外政策の一方で、若きヴィクトリアの即位、水晶宮の建設、ゴシック様式の大英帝国における流行などの、絢爛たる側面があわせて語られていました。
どこかその語り口が貴族的で高慢、ときには他者(他文化)に偏見的に見えるのは、「大英帝国の人間」の心情すら描ききろうとした作者の意図なのでしょう。実際、大英帝国側に肩入れしているように見えて、ちょっと注意深く読んでみると、大英帝国を突き放したようなものの書き方は圧巻だと思いました。
印象的だったのは、イギリスが(当時のヨーロッパは皆そうだったのかもしれないですけれど)、人道的側面を重んじたゆえに、植民地の文化を破壊してしまったということでした。インドにおいて妻の殉死(サティー)を禁じたり、信仰のために他者を殺害するサグという集団を撲滅しようとした大英帝国の姿勢は、一方で称賛されることもあるでしょうが、他方では自分の文化が正しいと思い上がった人間たちによる、文化の侵略でもあります。そこが深く考えさせられるところでした。
まだ下巻を読んでいないので、このお話がどう完結するか、そして三部作がどう完成していくのか楽しみです。
- 感想投稿日 : 2013年2月15日
- 読了日 : 2013年2月15日
- 本棚登録日 : 2013年1月24日
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