パンデミックなき未来へ 僕たちにできること

  • 早川書房 (2022年6月25日発売)
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2010年、ビルゲイツがTEDの講演で「ワクチンで人口増加を抑制する」というスピーチをした。これは、発展途上国では乳幼児の死亡率と出生率が高いことを踏まえて、ワクチンで乳幼児の死亡率を抑えれば、出生率も低下して人口爆発が防げるという意味。合わせて、核兵器以上にウイルスによるパンデミックをリスク想定すべきだと。これが抜き取られ、コロナウイルスを恰もビルゲイツ財団が自作自演で引き起こしたかのような陰謀論が生まれた。

半信半疑、というと情け無いが、よく分からなくなっていた。金持ちの心理が読めない。際限なく金銭を保有しても仕方ないから、金満物欲には限りがあり、人は善的行為に傾いていく筈だ、という、充足条件付き性善説的な考えを私自身は持っている。だから、ビルゲイツ自身は悪しき方向に働かない。しかし、残念ながら、人類そのものの善し悪しが不明なのである。少なくとも、そんな悪意をスピーチする訳は合理性が無いから、陰謀論は反知性だが。

この話ズバリではないが、彼は次のようなコメントを本著で述べている。

1960年には19%近くの子供が5歳の誕生日を迎える前に死亡。地球上の子供の5人に1人が5歳まで生きられなかった。1990年には世界の小児死亡率を半減10%わずかに下回るようになった。今は5%未満。今より多くの子供が生き延びたら世界の人口が今より早いペースで増えるのは常識のように思える。実は自分もかつてはこの問題を心配していた。しかし間違っていた。小児死亡率が低下しても人口過剰にはつながらない。5%未満でも年間5百万人を超える貧困国の子供が亡くなっている。これを救いたいと。

また、核兵器以上なのかは分からないが、バイオテロの最も恐ろしい武器は、天然痘だと。天然痘は、既に根絶したが、アメリカとロシアの実験室にサンプルが保管されている。空気中に広がり、死亡率が極めて高く、感染者の三分の一が亡くなる。今は予防接種もしなくなり、免疫を持つ人は殆どいない。怖いのは、ウイルスによるパンデミックというのは、こうした裏付けがあってのものだろう。

これらに関しては、筋も通るし、敢えて悪役、痴呆を演じる意味も無ければ、正直な話だと思う。ビルゲイツについては、財団のモンサントとの関係を邪推する批評もあり、ここは定かでは無い。頭の良い富豪の動きや考え方を、もっと勉強したいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年12月24日
読了日 : 2022年12月24日
本棚登録日 : 2022年12月24日

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