わが父文鮮明の正体

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  • 文藝春秋 (1998年11月1日発売)
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統一教会の開祖である文鮮明の息子である孝進の妻となった洪蘭淑による告発文と言えるだろうか、宗教自体の問題点というよりも、その「真の家庭」を取り巻く歪な権力構造が作り出した小皇帝としての孝進の妻に対する支配、暴力、コカイン、不倫、それをメシアの子として正当化する事で、逃げ場のない悲劇が語られる。

至近、再注目されている宗教と政治。法治国家であれば、民主主義的手続きによる、帰属する国民は法律というルールに従う事が期待される。国民は、生まれながらに、否応なくそのルールを適用され、国籍を変更するなどの逃げ場はあっても、自律せぬ子どもがそれを選択する視野も能力も地縁も持ち難いのが実情。宗教はそのルールに包括される関係性ながら、自らの戒律、ルールを定める。入信は国籍と異なり、自由選択であれば、脱会させぬためには、強く縛り付ける仕掛けが必要であり、パッケージとして教祖の神格化や戒律、身分制度、収益源の確保(献金の正当化等)を設定する事で、完成度の高い組織として運用されている。信仰の共有拡大こそが、宗教の命題。その運用に委ね、安らぎや心の解放を得る効果もあるだろうから、宗教=悪と単純化してはならない。但し、脱会、棄教の自由を確保したり、献金の制限、虚偽を取り締まる等のルール運用の改善は「政治と宗教」両サイドで必要だろう。両者がもたれ合う関係性こそ、カルトである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年7月28日
読了日 : 2022年7月28日
本棚登録日 : 2022年7月28日

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