すごい作品だと思った。
心理描写の細やかさが素晴らしい。
おぼすな様は作品内でもわずかに触れられているとおり、産土神を指すのだろう。
( http://kotobank.jp/word/%E7%94%A3%E5%9C%9F%E7%A5%9E )
それが何であるかは明言されないが、自然そのものやなんらかの法則性もしくはそれを司る存在なのだと思う。
人間にとっては禍福を与える存在ではあるが、おぼすな様は、善悪で捉えられるものではなく単に「ある」というものなのだろう。
遠野物語やもしくは押切蓮介氏の描く山の寓話少し近いものを感じた。
自分の解釈ではあるが、おぼすな様は「飢えて」いたのだと思う。
朝日がりんごを食べてしまったのも偶然ではなく、おぼすな様の思惑(といってよいのか分からないが)によったものだったのでは。
前述したようにそこに善悪の感情はなく、例えば自然界において生きるために捕食するといったごく当たり前のものだったのかもしれない。
だが、雪乃丞に限らず、人間側にとっては理不尽にうつるのは間違いない。
自分が同じ立場でも雪乃丞と同じ行動をとったかもしれない。
朝日を取り戻すために、そしてその不条理に怒りを覚えて。
この物語は必ずしもハッピーエンドではないが、全く救いがないというわけでもない。
読後本当になんともいえない気持ちになる。
だがここまで心を揺さぶられる作品は久しぶりだった。
とても悲しいが、この作品が好きだ。
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- 感想投稿日 : 2014年4月20日
- 本棚登録日 : 2014年3月10日
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