デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランドの北欧5か国の民話を集めた、児童向けの書籍。
概ね素朴な物語で味わい深く読めた。
やはり、多くの土地の民話と同様、戒めや教訓を含んだものが散見される。
例えば、貧しい少年が得た宝物を横取りする強欲な夫婦が最後には懲らしめられる「北風を たずねていった 男の子」や、正直な弟がお姫様の病気を治し、幸せに暮らす「命の実」などがそう。
童話「ヘンゼルとグレーテル」と話の筋が似た「屋根がチーズでできた家」や、「シンデレラ」のように王子が靴が合う女性を探す「赤いめうし」といった類話も見られ、これも根っこの部分でどこかつながっているのかなと興味深く読んだ。(ちなみに「赤いめうし」で靴を履こうと足を切り詰める描写が怖い)
フィンランドの民話「木のまたアンティ」では、叙事詩「カレワラ」でも登場する神話上の土地ポホヨラや、その土地の支配者である魔女ロウヒが登場し、これも興味深かった。この話も骨太で好きだ。
個人的に一番好きなのが「正直な若者と ねこ」。
ねずみの害をねこが救う話は他にもあり、この話もそれに類するものであるが、若者が道中出会う人々がみな朴訥で親切なのがよい。
ついでにいうと、タイトルもどこか惹かれるものがある。
また話によく登場する魔物トロル。
日本の妖怪のように、自然の脅威や、推測であるがおそらく異民族などもそのルーツであると思う。
本来恐ろしい存在であったはずのトロルだが、これも日本の妖怪のように少し間抜けで憎めない存在としてたびたび描かれる。
人間は知恵や勇気をもってトロルを討伐し、その宝物を得ているのも、例えば「桃太郎」などと共通しているようで面白かった。
北欧といえば、自分の中ではデスメタルの本場という形で親しみがあるが、民話もどこか寒い土地独特の空気感があり、いい話でもどこか暗めなのが自分好みであった。
本棚に、以前購入して積んでいた北欧神話の本もあるので、時間を見つけてそちらも読んでみたい。
- 感想投稿日 : 2019年10月17日
- 本棚登録日 : 2019年5月24日
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