若者論といえば、的存在になりつつある原田氏の著作。情報病という本で原田氏の存在を知り、チェックしていたので著者名一本買う。
この本を読んで
「近頃の若い者はダメだ」
とは言えないあたりに、著者の皮肉が効いている。
携帯世代(ケータイネイティブ)と新村社会の関係性。新村社会の性質とそこに中に存在することの意味。
これらがメインのテーマである。
実際の若者の言葉から、その関係性が部外者にもおぼろげにつかめるあたりは、力作と言えるのではないか。
構成としては、まずネガティブな性質を洗い出しつつも、後半はポジティブな可能性と、そこに潜む問題を明らかにしていく。
はっきりと言えるのは、人間関係の質的な転換がもうすでに起きているということだ。それは若者でなくてもTwitterをやっている人間ならば実感できるだろう。もちろん携帯でつながっている世代とTwitterをやっている世代は重ならない部分が多いかも知れない。しかし、今までの日本社会の人間関係が崩れる変わりに、新しい人間関係が生まれていることは確かだ。
そこに潜む問題とは、それを有効に活用して個人の力を伸ばしていくような人間と、自分の好みの情報だけ寄り集め、タコツボ化していく人間との格差の問題であろう。
ネットワークの格差は、旧来の環境による格差とは質的に異なるものだ。お金持ちであるからどう、といった事はあまり関係が無くなってきている。コミュニケーション能力と前向きな意志、そしてネットワークを維持拡大していくための労力を払える人間は、今までの「若者」が手にすることができなかった力を持つことができる。
そういった世代に向けて私たちがどのようなメッセージを投げかけていくことができるのか。
「近頃の大人ななぜダメなのか」といった電子書籍が発売されないように、そのメッセージについて真剣に考えてみるべきかも知れない。
- 感想投稿日 : 2018年10月9日
- 読了日 : 2010年6月27日
- 本棚登録日 : 2018年10月9日
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