酸性雨 (岩波新書 新赤版 230)

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  • 岩波書店 (1992年5月20日発売)
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1992年刊。著者は元朝日新聞編集委員。空気中の窒素酸化物・硫黄酸化物の増大の結果、雨、霧の酸性度上昇、直接、森林・植物に対する毀損のみならず、土壌の微生物死滅→生態系破壊、金属の水溶化→土力低下→植物毀損。さらには、湖面・川面における酸性度の亢進→各種プランクトンの死滅と重金属類のイオン化・水溶化→湖面等の生態系破壊→動物死滅といった間接的問題点も解説。また、欧州、北南米、アフリカ等地域毎の実情と環境保全の世界的取組とその抵抗に触れる一方、酸性雨形成の化学的解析と要因にも筆が及ぶ。後者は興味深い。
が、不明または理解困難な内容も多々。また、少し古い書なのでアップデートが必要だが、少し関心が薄れていないかという危惧もある。本書にある北欧諸国・北極圏を想起するまでもなく、窒素・硫黄酸化物の大気中への撹拌の問題は、一国内の問題ではないからだ。特に、石炭を燃料として利用する隣国がある日本なら、なおのことである。なお、松の如き針葉樹=裸子植物は酸性雨・酸性霧で、葉のみならず、種子と土壌をやられ、いわゆる松くい虫の如き病害虫への抵抗力を失う問題にも注意。杉も類似の問題を抱えているらしい。
PS.酸性雨の形成メカニズムは判然としない部分が多く、また、森林等の毀損・消滅の要因は多々あって、それらが複合していることは否定できないようだが、その主要因たる大気中の窒素酸化物・硫黄酸化物の増大の要因が非人為的なものということはなさそうである。むしろ、工場排煙、石炭等化石燃料の利用、車等の利用拡大がその主要因だということは否定できなさそうだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月23日
読了日 : 2017年1月23日
本棚登録日 : 2017年1月23日

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