ミラーニューロンの発見: 「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新書juice 2)

  • 早川書房 (2009年5月1日発売)
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本棚登録 : 347
感想 : 34

2009年刊。◆現実に運動をせず、ただ観賞しているだけで運動に関わる神経細胞が活動する。この摩訶不思議な現象を生み出すミラー・ニューロン。また、ミラー・ニューロンはこの狭義の面だけでなく、さらに広い意義を持っている。それは他者への共感のような社会生活面に関わっているという点だ。本書は、このミラー・ニューロンの神経科学的側面とそれが人間の活動・行動・思考に及ぼす側面とを、最新の脳画像診断技術と哲学的考察(現象学・実存主義)とを交え論じる。自閉症患者の行動を積極的に模倣すると自閉症的症状が軽減する事実は驚異。
もっとも、ミラー・ニューロンが生得的に毀損している点が自閉症の根本原因とは思えない。個人的には、自閉症の根本は、感覚統合・選別・分別が困難な障害により、感覚神経が受ける大量情報を切り分けられない。そのため、視覚・聴覚から入力される情報を模倣できない(しない)結果、二次的にミラー・ニューロンの発達が阻害される。この過程が自閉的症状を生み出すのではないか、と考えている(あくまでも仮説ですが…)。ならば模倣術を患者に行う場合でも、大量の情報が入ってこない環境設定をする方がより効果的ではないか、と推測している。
哲学的考察を、神経科学・大脳生理学の分析視座、仮説構築の道具としている点は、まったくもって興味深いところ。どうにも読みにくかったのは、この哲学的考察をする上での読み手(私)の知識不足によるところが大きいと思う。また、確かに本書全体が仮説の域を越えていないだろうが、興味深い内容であり、合理的な説得力を持つ内容であることは間違いない。要再読。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月16日
読了日 : 2017年1月16日
本棚登録日 : 2017年1月16日

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