絶歌

著者 :
  • 太田出版 (2015年6月11日発売)
2.86
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本棚登録 : 1910
感想 : 229
4

すごく評価が低い。

本を評価するこの媒体で、読む価値がないと言われて2.88。

書いてる人が世間を震撼させた『元少年A』だから?

私はそれが一番悲しいなと思ってしまった。

断っておくが、少年Aがやったことを肯定するつもりは一切ないしどんな理由であれ人を殺すのはよくない。喧嘩とか怨恨とか痴情のもつれとかだとしてもダメだし、理由なく興味で殺すなんてもってのほかだ。

ただ、フィクションとは違う実体験だからこそ分かることだってたくさんある。
犯罪者が本を出すことに対して金が欲しかったから書いたんだろ的な発想をよく目にするけど、メディアがそう見せてるだけなのではとよく思う。

少年Aの言葉はすごく詩的で、どの描写の詩的様式で撮られたモノクローム映画のようだ。
きっと人を生まれて物心がついてから目に入った全てがそんな風に見えていたんだろう。

目に映る人も登場人物なだけ。
身近に愛をくれる人間以外は出演者。

そんな風に思える文章だった。
ここに首を置いたら美しい演出になっただけ。
美しいものを見たら興奮したからオナニーしただけ。
それがたまたま死だっただけ。

それだけの話。

その後の半生で人らしくなるための努力をして、やっと普通になれたとしても、罪を背負う。
自分のしたことが罪であることを認める。

流石に100%理解はできない。
一線を越えてないだけだけど。
逆に言えば、私は被害者家族ではないから、そっちの気持ちに寄り添うこともできない。

だってみんな、事件に注目した理由はドラマや漫画で出てきそうないかにもは殺人だったからでしょ。

被害者家族よりも、首が置かれたことに注目した。
私だってその1人だから被害者家族と一緒には泣けない。

ただ、少年Aが自分の人生を振り返って同じ気を起こさないまでになったことや、それでも罪を背負っている。それが人を殺した者の全てだってことを、一番分からせてくれる本だと思った。


フィクションのミステリーだけじゃ分からない。
ちゃんと見つめて、正当に判断してほしい。

犯罪者が書いた本はクソなんじゃない。
その視点は結局、事件の凄惨さに食いついた者たちと変わらない。

って思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月16日
読了日 : 2023年6月16日
本棚登録日 : 2023年6月16日

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