助けてと言えない 孤立する三十代 (文春文庫 編 19-3)

  • 文藝春秋 (2013年6月7日発売)
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感想 : 28

かなり笑えない。本当に明日は我が身。
非正規雇用が増えて、正社員すら足下がぐらついている世の中で、働き盛りの人達すら、ホームレスになる可能性は十分ににある。

ホームレスとして取材された人達は、少なくとも怠けてるとか、能力が圧倒的に低いなんて事は、絶対ないです。
でも全員が強い責任感を通り越して、殆ど脅迫概念に近い考えを抱いているのが胸が痛くなります。
「人様に迷惑をかけてはいけない」「自分が悪い」「何とかなる」。
折角自分で生活保護を申請しようとしたり、NPOの人が気にかけても、助けを求める事はどうしても出来ないんです。「1人で何とかしないといけない」という考えが強過ぎて。助けを言うのも、彼らにとっては勇気が居るんです。炊き出しのお誘いですら、彼らには勇気が居る事なんです。

勿論彼らは何かしら働いていた時期がありました。
でも紹介された1人のお話には、社員同士全員余裕無い上に、仲間じゃなくって敵という考えを持っている。その人だけじゃなくって、誰しもがそういう状態。みんなびくつきながら働いている。
会社に努めても誰にも心開けない、社員は道具みたいな扱い。でもこういう会社は多い。
皆余裕がない。助け合いが出来ない。必死。
働いても働かなくっても苦しみしかないこんな世の中に、個人ではとても太刀打ち出来ません。
世の中の多くの人が身動きとれない。読んでいてそういう印象でした。

生活保護を受けるにしても、受けられないのは「自分で何とかしなくては」という事もある様子ですが、生活保護を受けている人そのものに対する印象の悪さも後押ししているんじゃないでしょうか。
TVに紹介されている生活保護者はどうも悪者として報道されがちなイメージを私は持っています。
本の取材の中にも「ホームレスと思われたくない」と思ってらっしゃる人は居ました。
彼らは人として強いプライドを持っている・・と言うよりは、世間のホームレスや生活保護受給者の印象の悪さが、『仕事の無い可哀想な人』というよりも『怠け者の悪い奴ら』という考えを推しているんじゃないでしょうか。
「自分の努力不足」と思っている人はいました。
私が非常に印象強く思ったのは、ある1人のホームレスの人が少し自分の事を語ってくれたときの言葉です。
「(30代に対する身近な理想を)誰しも夢見る幸せな過程だとか、色々あったと思うんですが、そこで失敗している。自分自身の責任」
彼らは誰にも責任転嫁しないんです。どうしても「自分が悪い」。
どうすれば、ホームレスの人達もギリギリの状態で働いている人達も全員が助けてと言える世の中になるんでしょうか。読んだ事はそれで頭がいっぱいでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年7月26日
読了日 : 2016年9月1日
本棚登録日 : 2016年7月26日

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