高原英理恐怖譚集成

著者 :
  • 国書刊行会 (2021年7月26日発売)
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感想 : 9

すごくよかったです。土俗的な不気味な雰囲気の話からグロテスクで猟奇的な作品まで、幻想も怪奇も網羅した独自のホラー世界を構築しており、確かに恐怖譚だなあと腑に落ちる。
『呪い田』傑作。町の中の誰かが誰かを呪ったという怖い噂。立て続けに起こる不幸。淡々と語られる得体の知れない恐怖。法則と原因を読み解こうとする語り手の語りの不気味さ。結末はベタだが好き。泥田坊という妖怪をこのように表現するとは。怖い。
『帰省録』妻子とは別行動で、久しぶりに実家に帰る私には、どうしても確認したい子供の頃の記憶に残る場所があった。石段を登った上にある平場「ゆぐみ場」はなんとなく皆から忌まれる場所であったが、そこだ起こった不気味な出来事を思い出すうちに、記憶が現在をも侵食してくる。
『緋の間』高額バイトで屋敷の留守役をすることになったが何かおかしい。美しい使用人がおり、いたせり尽せりだが、屋敷からは一切出られない。その理由に気づく頃には取り返しのつかないことになっている。グロテスクで美しく生々しい怪異譚。
『樹下譚』不思議な噂の多い町で、タクシードライバーの子供の頃の体験を聞いた私は、その後、彼の死の顛末や記憶の不整合まで知ることになる。彼の心に焼き付く座敷牢の美少女の思い出は耽美的で幻想的。優しく物哀しい、一種の異類婚姻譚。
『かごめ魍魎』こええ。これは別なところでも読んだことあるけど、いい話かと思ったら、最後にほんと怖い。
『グレー・グレー』死者がなかなか死に切らない世の中になってしまった。生前の記憶を保持するゾンビです。亡くなった彼女の腐敗を防ぎ、世話をして、たまに会話や散歩をする主人公。それでも死者は段々と劣化して消滅に近づいていく。死者と生者の淡い交流。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月15日
読了日 : 2022年8月15日
本棚登録日 : 2022年8月3日

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