日本的「勤勉」のワナ まじめに働いてもなぜ報われないのか (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2022年5月13日発売)
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長年、組織の風土改革に携わってきた著者が、現在の会社文化・働き方・組織風土に対し、問題点を挙げ、解決策を提案する一冊。
現在の日本経済の低迷の原因を日本人特有の勤勉さにあるとし、その思考の変革を求めています。これまで組織風土の問題点を指摘していた著者らしく、これまでの著書などで述べてきた内容を踏まえていますので、過去の著書を何冊も読んできた身としては懐かしさと、組織の問題の根深さを感じます。
著者はこの中で、軸思考というものを提案していますが、具体的に行うには難しく、個人の能力だけで解決できるものでもないため、長期的・組織的な視野で臨む必要があります。

▼日本経済の高度成長を支えてきた、日本人が持つ職務に忠実な勤勉さこそが、今の停滞の主因になっている
▼置かれている前提を問い直さず、どうやるかしか考えない姿勢は歴史由来であり、ある種の社会規範としてあまりにも深く根付いているために、誰もがそのことがもたらす意味の大きさに無自覚である
▼日本人は、勤勉で粘り強く、結束力は世界一でありながらも、こうした「思考停止」に陥りやすいという”特異性”を持っています。それは、「運命として与えられた規範を堪え忍ぶ姿勢」にどこか親近感を持ち、それを率先垂範することを美徳とする、という一種の「勤勉美学」が組織の中に息づいている、ということでもあります。だからこそ、組織人としての規範から外れる行動を選ぶことは、日本人にとってハードルの高い課題になってしまうのです。

▼無自覚な思考停止ーものごとの意味や価値などを深く考える姿勢を欠いている状況ーが日本社会全体に蔓延してきたのが平成の時代であったため、今の停滞をもたらしてしまっている
▼常に旧来の価値観でそうした問題現象を取り上げるだけで、問題現象の奥に潜む問題の本質ーつまり、無自覚の思考停止ーには今まではほぼ誰も触れることがなかった、ということです。それが、日本という国がはまってきた落とし穴なのです。

▼勤勉1.0 →勤勉2.0
 枠内思考→軸思考
 閉じる場→拓く場
 役職意識→役割意識
 確定した結論→拓かれた仮説
 予定調和・前例踏襲→試行錯誤・問い直し

▼一定の環境さえ用意すれば、お互いに自分に似た「何か」を共有しようとする感覚を多くの人が持っている、という人間関係における強靭な強みが日本人にはあるからです。この感覚を私は「日本人が持つ共感力」と名付けています。
▼「枠内思考⇒閉じる場⇒枠内思考」という悪循環を断ち切り、「考える力」を発揮しなければ、新たな価値、新たなビジネスモデルなどを創り出すことはできない
▼軸=”意味や目的、価値”を考え抜く姿勢

▼”軸”についての仮説
①「めざすものを持った生き方を志向する」
②「タテマエよりも事実・実態を優先する」
③「”当事者”としての姿勢を持つ」
④「常に”意味や目的、価値”を考え続ける」
⑤「”拓かれた仮説”にしておく」
⑥「”めざすもの起点”で考える」
⑦「衆知を集めて担当責任者が決める」


<目次>
序章 日本の労働生産性が伸びない理由
第1章 「勤勉」はなぜ、日本人の美徳となったのか
第2章 勤勉さが生み出す無自覚の「思考停止」
第3章 自分で判断する力を育む「軸思考」
第4章 新たな価値を生み出していく「拓く場」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年7月23日
読了日 : 2022年7月6日
本棚登録日 : 2022年6月22日

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