屠場

著者 :
  • 平凡社 (2011年3月12日発売)
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本棚登録 : 167
感想 : 23
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ノンフィクションかエッセイと思い込んでおり、注文して届いたら立派なモノクロの写真集であった

タイトルの通り、生きている家畜を屠殺し食肉にする屠殺場の写真集
現在はかなりの部分で機械化が進み、生き物の死を感じにくい環境となっているようであるが、本作は旧来の屠殺場での仕事風景を収めた写真集となっている
モノクロであるためギリギリ見ることが出来た気がする

熟練者たちは、消費者がウマイと思う肉となるように、その腕をふるい屠殺を行う
屠殺の腕がまずかったならば、きっとそれを食うものは「マズイ肉だなぁ」などと言うのだろう
そうだ、自分は肉を食べる、屠殺された肉を食べる、そんな当たり前のことを強く意識する

”牛の眉間に鉄の芯棒が突き出る鉄砲を毎日何十頭に打ち込むSさんは、蚊がたかっても決して叩かない
”手のひらで、そっと追い払うのだ

自然から遠ざかり都心で「文明」に囲まれて暮らしていると、命は、どこか遠いものになってしまう
偶然今読み進めている本の中で、戦後、GHQは日本の家制度を崩壊させるため、出産を自宅ではなく、病院で行うように政策を進めていったとあった
これまで、生と死に接する機会が最も多かった場所は病院だった
病院は人間の生死が生々しくある場所、と思っていたが、自分の用な一般的な人間が許容出来るレベルに生々しさを覆い隠しているのかもなと思った

私は自然の一部であることを忘れぬように、体に自然を彫っている者であるが、本作を開いて、すっかりそのことを忘れている自分に気づかされた
呆れたものだ
自分は何者かを忘れぬように、かさばるこの本作をブックオフすること無く手元に置き、時々開くことにする

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 【写真集】
感想投稿日 : 2013年2月18日
読了日 : 2013年2月18日
本棚登録日 : 2011年4月17日

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