「英国王のスピーチ」は2010年に公開されたアメリカ映画である。吃音に悩む英国王ジョージ6世の史実を基にした第83回米アカデミー作品賞受賞作。
英国王ジョージ5世の次男という華々しい生い立ちであるジョージ6世だが、彼には暗い過去があって、人前で上手く話すことができない重度の吃音症を患っていた。人前に出ることが期待されるロイヤルファミリーの一員であるジョージにとってこの症状は致命的であり、名誉挽回のためにも治癒する必要があった。そこで、ジョージは妻のエリザベスと共に幾つもの言語聴覚士を訪ねたが一向にジョージの吃音症を治すことができなかった。ある日、ジョージはスピーチ矯正の専門家のローグと出会う。ジョージの吃音症はローグの画期的な治療法によって、徐々に改善へと向かっていった。
ジョージが吃音症を克服するという単純な物語ではなく、ジョージとローグが吃音症を克服する過程を描いている。吃音症に悩むジョージと、それをなんとか改善させようとするスピーチ矯正のローグ、彼らの関係は一見弟子と師匠のそれに見えなくもないが、一方は劇中で国王に即位するが、一人は言語聴覚士に過ぎない。社会的なピラミッドで見たら彼らは明らかにかけ離れている。しかし、彼らは友人のように接し一つの目的に向かう。彼らの間には吃音症を乗り越えようとする作業を通して友情を芽生えるが、最後のエンディングではそのシーンを監督はわざと見せない。ジョージのスピーチが終了し、文章でジョージとローグの友情は死ぬまで続いたと書かれている。私はこれが気に食わなかった。彼らの友情は本当に最後まで続いたのだろうか。吃音症が改善するに従って彼らの関係は薄れたのではないだろうか。ジョージとローグの友情は吃音症治療の延長線を超えたところにあることを上映時間を延ばしてでも描いても良かったのではないだろうか。
- 感想投稿日 : 2011年8月7日
- 本棚登録日 : 2011年8月7日
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