世界一孤独な日本のオジサン (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA (2018年2月10日発売)
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孤独が健康に与える悪影響・リスクは欧米を中心に多くの研究がなされている。
それによれば、孤独のリスク・健康に与える悪影響は、例えば以下の通りである。
■1日たばこ15本を吸うことに匹敵
■アルコール依存症であることに匹敵
■運動をしないことよりもリスクは高い
■肥満の2倍リスクは高い
■孤独度が高い人がアルツハイマーになるリスクは孤独度が低い人の2.1倍
■孤独は冠動脈性の心疾患リスクを29%上げ、心臓発作リスクを32%上げる
■孤独な人はそうでない人より、20%速いペースで認知機能が衰える
こうなると、孤独は「病である」と言っても過言ではないかも知れない。

困ったことに、各種国際比較によれば、日本は「孤独大国」と呼んでも差し支えないほど、人々の孤独度が高い国であるらしい。その中でも、筆者によれば、リスクの高いのが、中高年の「オジサン」である。題名の通り、「世界一孤独な日本のオジサン」であり、ということは、孤独によるリスクが、世界で最も高い集団と言えるのかも知れない。しかも、日本のオジサンはプライドが高く、「自分は孤独である」ということを、他人にばかりではなく、自分自身に対しても認めたがらない、あるいは、進んで孤独になろうとする傾向もある。
上記の通り、孤独に関する研究は欧米で進んでおり、従って、孤独がもたらすリスクに対しての認識は高い。それは個人にとってのリスクであるばかりではなく、不健康な人が増えて、例えば、医療費が上がる、介護コストが上がるという社会的な負担の問題としても認識されており、特にイギリスでは、「孤独担当相」が置かれる等、対策が進んでいる。
日本では、孤独が社会的なリスク要因であるという認識はこれまで進んでいなかったのであるが、最近になって一転、政府も積極的に対策に取り組むようになっている。2021年4月1日には、イギリスに次いで世界で2番目に「孤独・孤立担当大臣」が任命された。また、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」が設置され、2022年12月には、「孤独・孤立対策の重点計画」の改定版が発表されている。

人間は、進化の過程で助け合い協力し合いながら生き延びて来た動物であり、他人と関わり合いながら生きていくことが、DNAレベルに組み込まれている、従って、人と関われない「孤独」の状態では、逆に生きる力を削がれるべく、プログラミングされている。それが、孤独が人間にとってリスクである理由ではないだろうか、ということが言われているようである。私自身は、幸いなことに現在は孤独な状態ではない。ただ、信頼できる家族や仲間が全くいないとか、ほとんど誰とも口をきかないで生活するとか、といった孤独の状態は、それを想像するだけでも、何だか健康を害しそうな気分になる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年2月20日
読了日 : 2023年2月20日
本棚登録日 : 2023年2月20日

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