女教師たちの世界一周 ――小公女セーラからブラック・フェミニズムまで (筑摩選書)

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  • 筑摩書房 (2022年2月17日発売)
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感想 : 6

2022.5.15市立図書館
日本の女子教育史を背景とした柚木麻子の小説「ランタン」やオルコットのB面「仮面の陰に あるいは女の力」、斎藤美奈子「挑発する少女小説」などで興味が湧いていた女子教育史につらなる一冊。私塾、ガヴァネス(家庭教師)などの不安定な苦境を味わってきたミドルクラスの女達が互助的な女子教育機関を設立し、女性の参政権や高等教育などのために運動しつつ、養成した教師をはじめ教育を受けた女性を各国に送り出すようになった経緯とその影響はいろいろな要素が相まって興味深い。
最初の収穫は、フランス革命から間もない時期に女性の人権を理解し女子教育のために行動したフェミニストの元祖メアリ・ウルストンクラフトという人物(「フランケンシュタイン」を書いたメアリ・シェリーの母親!)をはじめて知ることができたこと。
帝国の植民地での「文明化の使命」が独りよがりの空回りで徒労に終わったアネット・アクロイドの挫折のケースは、女子に限らず異文化間の教育のあり方について学ぶことがあるし、「嵐が丘」のスピンオフを描いたジーン・リースという作家を知れたのもよかった。イギリス本国の男と対等な教育をめざす女校長たちの志が実学志向のカナダやアフリカなどで受けなかったこと、西インド(ジャマイカやドミニカなど)におけるイギリス流の教育とそういった国から英国に渡った女子学生の受難、ミッション(宣教)系の教師との違い、女性差別と人種差別のクロスセクションなど、示唆に富む内容だった。
英国から日本に直接きた女教師はあまりいなかったのか、今回は日本のケースがふれられていなかったが、明治以降カナダやアメリカから女教師を迎えてうまれたミッション系の高校や大学、津田梅子ら留学した女性たちがつくった学校のことなどもあわせて調べてみるとおもしろいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 言葉・専門書・テキスト
感想投稿日 : 2022年5月15日
読了日 : 2022年5月29日
本棚登録日 : 2022年5月15日

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