3.11の東日本大震災後、反原発が正義となり、原発推進派はそれだけで邪悪な存在となってしまった。
マスコミでは、反原発のデモが繰り返し垂れ流され、科学的知識を持ち合わせた専門家の意見は一切取り上げられなくなった。
こんな風潮に警鐘を鳴らす一冊となっている。
そもそもの前提として、絶対安全、人間社会に全く害のないエネルギーというのは存在しない。また、現代社会において、私たちの生活にエネルギーは必要不可欠な存在となっている。
この前提をはき違えた感情論が先走りしているのが昨今の反原発論調である。
全く無害のエネルギーが存在しない以上、どのエネルギーがよりましなのかという議論にならざるを得ない。
今の日本では、火力発電が主力で、石炭・石油を燃やしてエネルギーを作り出している。
しかし、火力発電というのは、大気汚染の影響が凄まじい。火力発電・車の排気ガスによる大気汚染が原因で亡くなっている人の数は全世界で、年間100万人もいるというから驚きである。
翻って、東日本大震災の原発事故による死亡者はゼロである。
非科学的な風評被害が深刻なだけであって、実は科学的に危険なレベルの放射能漏れは起きていない。
しかし、当時の民主党政権が原発の稼働をストップさせてしまったために、原発や電力会社への風当たりは一層強くなってしまった。
原発を稼働できないことにより、電力会社は古い火力発電所を稼働せざるを得ない。
しかし、火力発電というのは深刻な大気汚染を発生させるため、原発を稼働させていれば亡くならずに済んだ人が、年間で推定5千人ほど出ると言われている。
環境、人体への影響はもちろん、経済的に最も合理的なエネルギーの選択肢は原発なのである。
電力会社も国もそれを理解しているから、原発を推進してきた。
惜しむらくは、国民の反発を恐れて絶対安全という神話を作り出してしまったこと。
リスクとリターンを当初からきちんと発信するべきであった。
- 感想投稿日 : 2024年3月24日
- 読了日 : 2024年3月20日
- 本棚登録日 : 2024年3月20日
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