拉致―左右の垣根を超えた闘いへ

著者 :
  • かもがわ出版 (2009年5月1日発売)
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本棚登録 : 49
感想 : 9
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蓮池さんは、家族会におられたときに、スポークスマンで、その冷静で論理的かつ切れ味鋭い発言が存在感がありました。

ただこの著作では、肝心なところで根拠とか論理性が飛んでしまっている箇所がたくさん見受けられたように思います。
根拠の説明に乏しく、蓮池さんらしからぬ印象も持ちました。
全体に文章もやや拙い感じもしますし、漢字記載すべき用語がひらがなだったり。

過去の「日本の過ち」と言われることに関して、蓮池さん自身は過去に事実として何があったのは自分にはよくわからないといっています。
ですが、過去に日本が朝鮮から強制連行した(と言われること)を事実として、弟さんたちの拉致問題を並列に扱っている点が、蓮池さんが「左翼化した」と言われるのではないかと思います。
「強制連行したし、拉致された日本だから、北朝鮮のこともよく気持ちをわかってあげられる・・・」というのは、そもそも歴史認識が異なる人にはまったく受け入れられないでしょう。

根本的な問題として指摘しているのは、ポリシーと一貫性なき日本の外交です。この点は深く同意します。

この拙さが、家族という被害者にまで多大な負担を強いていることです。
ピョンヤン宣言、村山談話など、過去に何度も日本の政治家が非を認めて誤っちゃっているわけですから・・・
国のトップがそう言ってる以上、ちゃんと謝って償いをして、被害者が帰ってくるならそれも手法としてありじゃないか、と。

極端なことを言えば、国のポリシーとして、拉致被害者が帰ってこないとしても、国はこれでいく!と政官一体で取り組むなら、それもありですが、それすらない日本のありようにつくづく呆れ、嫌気が差すのもごもっともです。

蓮池さん自身、左でも右でもない、とおっしゃっています。無自覚に左的なところも垣間見ましたが、まだ帰ってこない拉致被害者の帰国を今でも深く望んでいる気持ちは変わりないでしょう。

たまたま弟さんが拉致にあったがために、蓮池さん自身も大変な人生を送ってこられたわけですからその点は深くご同情したいといつも思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年1月18日
読了日 : 2013年1月18日
本棚登録日 : 2012年12月27日

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