イスラム2.0: SNSが変えた1400年の宗教観 (河出新書)

著者 :
  • 河出書房新社 (2019年11月23日発売)
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感想 : 42
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カロリン・エムケの本を読んでもやもやもやもやしていたので積読から真っ先に消化。アンサー本かと思うような内容で読んですっきりした。読みやすくて面白いのでサクサク読める。
実際に起こった事件や実際に行われた調査に基づいてイスラム教の教義・価値観・世界観について丁寧に分かりやすく解説してある。そして、インターネットによってもたらされた新たなムスリムの宗教観の変化について書かれる。最後の方のムスリムとの付き合い方編はかなり実践的でいいなと思う。私も何も知らずムスリムの方との付き合いで一回失敗したことがある。

「イスラム教徒にとってはイスラム教こそが普遍真理ですから、近代的価値観がイスラム教よりも優れた素晴らしいものだと考える発想がそもそもありません」
「西洋の価値はイスラム教より優れているので西洋に定住すれば必ず啓蒙されるという考えは、イスラム教に対する無知に立脚しており、それこそイスラム教徒に対する差別です」
本当~に、その通りだ!
ムハンマド風刺画事件にしろ、融和政策への反発にしろ、世界観が根底から違うということは、もういい加減明らかになってきているよなと思う。
あくまで「多様性など、本当はないほうがずっとラク」だけど、それを踏まえて「実際問題として多様性が不可避であるなら、できるだけトラブルを避け、互いの不快を軽減する努力をするより他に道はありません」という飯山さんの姿勢は非常に共感できる。共生に都合の悪い所こそを、きりきりするまで見つめて道を探っていかないといけない。

イスラム2.0時代の「自分を取り巻く全てが神の命令に反する罪深いものであるかのように思えてくる」アイデンティティ危機と言う話は、私も子供の頃キリスト教原理主義系の教育を受けて育ったのでとても理解できるところがあった。
宗教と乖離した学校教育や現代社会の生活で、いつも神を、みんなを裏切っているという罪悪感、ストレス。何を選ぶのか、常に試されているという感覚。どちらを選んでも常に何かを裏切る。
その結果として若者の間で「ヒジュラ」が流行しているというのは知らなかったしすごく面白い話だった。インスタやらyoutubeでヒジュラ・セレブなるものが誕生しているの、すごい!でも流行るの、分かる。皆「正しい」価値観と自分の生活のバランスを取る方法を模索しているんだな。
その中で「無神論ブーム」もあるというのがまた面白い。これはヒジュラと逆へ行って、生活寄りでバランスを取ろうとしているわけですね。アズハルも振り回されるくらい、すごい速さでイスラームも変わっていっている、とてつもない時代に生きているんだなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 学術
感想投稿日 : 2019年12月2日
読了日 : 2019年12月1日
本棚登録日 : 2019年12月1日

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