奪還―引き裂かれた二十四年 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年4月25日発売)
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感想 : 8
5

今年4月の南北首脳会談以降、朝鮮半島情勢に変化が見られるよう
になったので日本人拉致の問題も前進するかなと注視しているの
だが、我が国の首相は自ら「司令塔」と言う割にはアメリカや
中国、韓国の首脳にお願いするだけなのだよな。

少しでも進展すればいいとの願いを込めて、拉致問題のおさらいの
為も含めていささか古くなった作品だが本書を手にした。

北朝鮮による日本人拉致が公になったのは1988年。前年に起きた
大韓航空機爆破事件の犯人・金賢姫の証言で日本語教育係だった
「李恩恵」の存在が明らかになってからだ。

著者の弟である蓮池薫さんが突然家族の前から姿を消してから10年目
だった。

家出なのか、恋人との駆け落ちなのか。なんの手がかりもない中で
探し舞ったご家族の苦悩、北朝鮮による拉致が明らかになってから
でも警察も外務省も当てに出来ない憤り。

拉致被害者の家族のひとりとのしての率直な思いが綴られており、
非常に重くて、痛い文章が続く。

なかでも政治家はとことんダメすぎる。比較的に好意的に書かれて
いるのは平沢勝栄氏くらいか。山本一太なんて家族会に「自分には
国連とのパイプもあるから」と言っているのに言っただけ。

拉致問題に関しても日本は本当に無策な国だと感じた。

蓮池薫さんら5人の帰国以降、拉致問題はなんら進展を見せていない
のではないだろうか。日本政府は最初の5人が帰国した時点で、この
問題には距離を置いてやしないかと感じる。そうして、自分たちの
都合のいい時だけ、拉致問題を持ち出して来てやしないか。

拉致被害者家族という当事者であるからこその怒りや、哀しみが
つまった1冊だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年5月9日
読了日 : 2018年5月9日
本棚登録日 : 2018年5月9日

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