天皇陛下の本心: 25万字の「おことば」を読む (新潮新書 595)

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  • 新潮社 (2014年11月17日発売)
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4

「ご清潔で、ご誠実で、ご信頼申し上げられる方」

今上陛下の皇太子時代、ご婚約記者会見で初対面の時の印象を
聞かれた皇后陛下がおっしゃられたお言葉。

今上陛下は正にこの皇后陛下のお言葉通りの方ではないのかと
思うことが多々ある。ご公務の様子をテレビで拝見するだけの身だ
が、お通りになる沿道で待っている人々やお出迎えの方々に対し
てにこやかにお手ふりをされるお姿だけではない。

お誕生日記者会見や式典ご出席の時にお話になるお言葉からも、
今上陛下がいかいして「象徴としての天皇」であることに務めて
いらっしゃるかが伝わって来る。

本書は産経新聞の元皇室担当記者である著者が、折々の今上陛下
のお言葉からお気持ちを読み解く。

「本心」なんて陛下ご自身やずっと陛下を支えていらしゃる皇后陛下
以外には知るすべはないと思うのでその点は引っ掛かるのだが、
本書に掲載されているお言葉を読むだけでも価値あり。

象徴天皇としてどうあるべきか、天皇として何が出来るのか。今上
陛下の模索については他の作品でも書かれているので、本書では
ご公務に対しての考えや、ご研究、ご家族についてのお言葉が参考
になった。

特に様々に憶測を呼んだ皇太子殿下の「人格否定発言」や「時代に
即した新しい公務」に対しては、今上陛下のみならず、秋篠宮殿下
のお言葉も引用されている。

今上陛下は勉強家でいらっしゃると思う。皇室典範は勿論のこと、
日本国憲法についても精通していらしゃる。それだからこそ、ご自身
の発言が政治的にならぬよう考え抜かれたお言葉ばかりである。

平成になって増えたご公務も多い。それは両陛下が「公平」を旨とし、
こちらにはお出ましになるが、あちらにはお出ましにならないという
ことをしないからだし、多くの海外要人との面会をなさるのも同じ
お考えだからだ。

本書は退位のご意向を表明される以前の2014年なのだが、ご自身の
年齢から来る変化にも早くから言及されていたことに改めて気づいた。

今上陛下の退位については平成30年が目途になっている。今上陛下
並びに皇后陛下のお姿やお言葉に接するのもあとわずかと思うと寂し
いものがある。

平成に生きられて、このおふたりを天皇・皇后として生きられて、本当に
よかったと思う。

平成流のご公務は引き継がれない予感がしているからだ。皇太子殿下
がおっしゃった「時代に即した新しい公務」が私には分からないし、祭祀
に重きを置く皇室に嫁ぎながら「祈ることに意義が見出せない」とおっしゃ
る妃殿下が皇后になるのだもの。

本書を一番読んで欲しいのは、実は皇太子妃殿下だったりするんだよな。
あ…また愚痴っぽくなってしまった。でもね、美智子皇后陛下は「国母」な
のだけれど、あの方が皇后になっても「国母」とは思えないのだもの。

余談だが、テレビも活字もいつから皇后陛下を「皇后さま」と言ったり書い
たりするようになったのだろう。天皇陛下を「天皇さま」と表現しないのなら、
こ「皇后さま」ではなく皇后陛下だと思うんだよね…ブツブツ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月24日
読了日 : 2017年1月30日
本棚登録日 : 2017年8月24日

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