カウントダウン・メルトダウン 上

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年1月27日発売)
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感想 : 41
5

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故。本書は震災
直後からの原発危機の20日間を綿密に追い、上下巻にまとめ
たノンフィクションである。

東日本大震災及び、福島第一原発事故に関連する出版物は
何冊か読んで来た。本書の著者は原発事故の民間事故調査
委員会をプロデュースひた人物だけあって、これまで読んだ
作品よりも内容が濃く、臨場感に溢れている。

大震災、津波、そして原発事故の複合災害。未曽有の危機に
直面した政府が民主党政権だったまずは日本の最大の不幸だ。

否、自民党だったらうまく対処できたというつもりはない。多分、
どの政党が政権にいてもあたふたしただろうとは思う。

思うのだが、やっぱり酷い菅政権なのだ。外国人献金問題で
追いつめられていた首相は、東日本大震災への対応で自身
の起死回生を狙ったのか?

官邸でも、視察に行った第一原発でも、乗り込んだ東電本店でも
怒鳴り散らしてばかり。危機管理の最高指揮官、最高責任者。
それがイライラしっぱなし。枝葉末節にこだわり、対局が見えない
指揮官なんて指揮官じゃない。

官邸もどうしようもないが、東電本店も救いようがない。当時の
清水社長はお飾りだし、実権を握っていた勝俣会長にしても
重大事故の責任感がないんじゃないか。

「黙って聞け。質問するな。耐えろ」

ある自衛官が部下に語った危機の際の心構え。菅直人という
人はこれがすべて出来ない人だったんだな。

私は原発事故対応時の菅直人、海江田万里を「人殺し」呼ばわり
しているんだが、実はもうひとりいたのが本書を読んで分かった。
細野豪志である。

もう自衛隊にしか頼れない。そんな時、現場での作業でのネックに
なるのが被曝量。それを無制限に引き上げ、志願制にしようと
していた。

自衛隊員なら死んでもいいのか。どあほう。北澤防衛相及び統合
幕僚長が必死に抵抗してくれたのが幸いである。

ダメすぎる政府にあって、北澤さんはいい働きをしてたな。さて、
下巻も楽しみ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月19日
読了日 : 2013年12月4日
本棚登録日 : 2017年8月19日

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