2012年、最高の一作となる予感の凄い作品。これは面白い。主人公はインドに降り立ったオーストラリア人。脱獄の果てにインドに辿り着き、そこでの邂逅やら異文化との衝突やらを経て、自分の人生を見つめ直す。その過程を描いただけの作品なのだが、これが抜群に面白かった。
先ずインドの描写。汚く猥雑な国、というイメージしか無いが、厳しく暖かく、そして心がある。それを表現する歌と踊りがある。そんな素晴らしい一面を鮮やかに描いている。何とも泥臭く、魅力的な国だと認識が改められる。そんなインドを描く道具が多種多様の人との出会い。キャラが立っており、彼/彼女がどう思うか、読んでいる側が思い描ける程に緻密でリアル。そして人の心の移り変わりさえも全く違和感が無く響いてくる。主人公の過去やインドでも出来事は何一つ日常的なものは無いが、それでも違和感が無い。むしろ自分に降りかかっているかのよう錯覚から抜けられなくなる出来栄え。作者の筆力と訳者の上手さに下を巻く。
しかし何と言っても本作の魅力はその詩的な表現の数々。登場人物が皆、気の利いたセリフを言う。とても日常的ではないのだが、いちいち心に沈み込んでくるセリフ群。これまで読んだ本の中でメモをした回数は最大級。覚えておきたくなるセリフや言い回しばかりで、どんどん読書スピードが落ちる。
この世界から抜け出したくない、という思いばかりが募る大名作。お勧めです!!
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- 感想投稿日 : 2012年4月29日
- 読了日 : 2012年4月29日
- 本棚登録日 : 2012年4月29日
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