砂漠の王国とクローンの少年

  • DHC (2005年1月1日発売)
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感想 : 14
4

 思った以上に好みで非常に面白かった。クローンって重たいのですがテーマ的には凄く好き。主人公が生まれからアイデンティティーへの苦悩を背負っていて、それに葛藤しながら、自分の生きる道を模索していく姿に心うたれる。
 世界観、ちょっと不思議な感じで、クローン技術が確立してるほどのテクノロジーあるのに、どこかレトロな雰囲気がありました。大きな芥子畑で奴隷制があるところが、昔のアメリカっぽいな。脳にチップ入れた奴隷とか、クローンの存在意義とか、国境を越えた人の末路とか、矛盾に満ちた洗脳教育とか、そういう設定がエグかったんですけども、そこにリアリティがあって、引き込まれました。緻密に描かれた世界観と、人間の醜悪さなどが、すばらしいと思う。
 キャラクターも、主人公のマットの未熟な部分も愛しいし、ボディガードの包容力やヒロインも良かったんですけど、なんといっても、エル・パトロンの邪悪さには惚れました。どぎつくて惚れ惚れする。最後の幕引きも非常に彼らしく、膝を打った。まさに宝を守っていたドラゴンのような人だったのだなと。
 そしてストーリーも、マットの成長の過程、偏見や裏切り、そして明かされる真実と脱走劇、芽生える友情、そして大団円! とスピーディで非常に滾るものがあったんですけど、ひとつ難を言えば、最後がけっこうあっさりで、マットが更に逞しく成長する過程など、もっと続きが読みたかった……! 結末に関しては希望が感じられて文句なしなのですが、絶対に、続編あると思ってたのに……!
 でも、それを抜きにしても、非常に上質な冒険ファンタジー+SF風味なので、ぜひ、少年が苦難にあいながらも成長する物語が好きならばオススメです。テーマ的にはけっこう重たいのですが、最後まで読めるお話だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2010年8月18日
読了日 : 2010年8月18日
本棚登録日 : 2010年8月18日

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