分かりやすくまた140頁程度と短く、詳しい予備知識がなくても読みやすかった。現在の中東を見る上で100年前のオスマン帝国崩壊後の状況が参考になること、「域外大国の権力政治に翻弄される可哀想な中小国・少数民族」イメージが果たして妥当か、普遍的な善や正義の難しさ、等に気づく。
民族や宗教の分布を無視して引いた線も、重視して細分化しすぎた線も機能せず、結局はムスタファ・ケマルが実力で得たトルコ領土の範囲が現在まで維持されている現実。露土戦争と西欧が介入する東方問題と、現在との類似性。同じ民族が加害者にも被害者にもなり得ること。「アラビアのロレンス」に表れた、「民族主義を掲げる各地の指導者が、域外の大国の介入に表向きは反発しながら実は利用しているという中東政治の根深い問題」。
筆者は末尾で、現在と100年前が似ているとしつつも、西欧と中東の力の差が狭まり、地域大国は「駒」として扱われることをもはや是認しないと述べている。では100年前以上に、「解決」にはほど遠くても、「安定」すら難しくなっているということだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
中東
- 感想投稿日 : 2018年5月30日
- 読了日 : 2018年5月30日
- 本棚登録日 : 2018年5月30日
みんなの感想をみる