「輸入置換」とか「衰退の取引」とか、なかなかに生硬な翻訳用語が多用されているため、シロウト的にはもう少し噛み砕いて説明してほしいなと感じたし、全部理解できたかと言われると心許ないが、かなり核心を突いた本なのではないかと直感的に感じた。
地方の経済活性化とか、発展途上国の開発援助とか、わたしが子供の頃から世間でずーっと行われてきたけど、あまりうまくいっている例を聞かない事業がたくさんある。
税金や補助金が湯水のように使われているにもかかわらず。
木下斉氏の本など読むと、地方の町おこしの暗い闇の実情が窺われたりするが、そういうお金は誰かを潤して、そして地元には残らない。砂漠に水が吸い込まれてしまうようにシュッと消え去ってしまう。
企業城下町や単作物産業で繁栄した町も、それがなくなれば火が消えたように衰退する。
結局地元が自前でリスクをとって、他では真似できない産業や製品を編み出して他の地域と取引ができるようにならなければ、また、それで得た利益を地元に落としてさらに地元を富ませるサイクルを作らなければ、町は衰退する。
著者は国単位でなく都市単位で経済の盛衰をまるで健康診断をみるようにと示唆する。確かにその方がいいかも。
また、大胆にも地域通貨を創設することで地方同士の取引が活性化されるとの提案も。
要するに経済圏を、昔の藩ぐらいの単位で回したら良いのかなと思う。
正直、中国やロシアと隣接する九州、北陸、北海道などは、東京にはない地の利があり、貿易でも人的交流でもどんどんやったら今より繁栄できるのでは?と思っていた。行政単位を昔の藩ぐらいに分けて、それぞれが産業や人材を育成する方が繁栄できる気がしていたので、ジェイコブス氏の指摘にはうなずくことが多かった。
そして衰退する町や国に生きることの怖さも感じた。
- 感想投稿日 : 2020年10月18日
- 読了日 : 2021年6月14日
- 本棚登録日 : 2020年10月18日
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