ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫 あ 133)

著者 :
  • 新風舎 (2005年2月1日発売)
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本棚登録 : 769
感想 : 93
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両親が新興宗教にハマリ、家庭崩壊(児童虐待)に陥った家に暮らす「僕」と、
幽霊好きの幼馴染「ちーちゃん」が織り成す、変わるはずのない「日常」が、
いとも容易く崩壊する様を描いた作品(裏表紙では「ジョブナイル・ホラー」と定義)。

本書は特異な多重構造となっており、両親が新興宗教にハマって日常が崩壊した「僕」を核に、
学校の怪談の謎を解き明かす過程で「悠久の向こう」に足を踏み入れ「日常」から
ドロップアウトしてしまう「ちーちゃん」が存在。

個人個人では完全に「日常」が崩壊する二人も、幼馴染という関係性だけは維持し、
お互いにか細い「日常」を継いでいるが、「僕」は家庭崩壊(父親が母親を撲殺)が
いよいよ進展する中、その状況に絶望。
そうした二人とは無縁の、本当の「平穏な日常」に暮らす先輩からの告白を受け、
現状からの脱出を夢見てしまう。

ただ、その夢は更なる悲劇を生む。残された「ちーちゃん」は完全に「日常」を失い、
「悠久の向こう(=幽玄の世界)」へ旅立ってしまう。
「僕」はパニックに陥り、「ちーちゃん」を探し続ける。
そして、「僕」は全く予想だにしない形で「ちーちゃん」と再会することに。。。

ストーリーの細かい部分はさておき、圧倒的なパワーでぐいぐい迫ってくる語り口。
本書がデビュー作(著者17歳)とは思えない、老成したスタイルで、一読の価値有。
あとがきで久美沙織が寄せる、辛口(そして深い分析)のコメントも素晴らしいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一般小説
感想投稿日 : 2012年2月18日
読了日 : 2012年2月18日
本棚登録日 : 2012年2月18日

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