著者には、一般に歴史常識とされている事柄がいかに根拠が乏しいままに流布されているか、「後ろ向きの予言」(結果から原因や過程を遡って解釈する)が歴史解釈をゆがめているかをテーマとする著作が数多い。
本書は、NHK歴史番組「その時歴史は動いた」の視点を検証するものであるが、番組批判は意図していないと断った上で様々な視点で「その時」に疑問を投げかけている。
テーマが多いために、やや掘り下げ不足の感があるが、在野の歴史家らしく、わかりやすく歴史を視るには複眼が必要であることを教えてくれる。
例えば、平清盛の「六波羅幕府」、源頼朝が実は肉親の情に厚いこと、承久の乱の功労者は大江広元など。
特に関ヶ原の戦いにおける家康、三成比較論にいまだに「結果論者の天下」が横行しているという指摘は我が意を得たりである。
このことが家康の評価を下げることにはならないのである。
ただ、最初の断りにも拘らず「その時歴史は動いた」の揚足取りに過ぎるきらいがあるのが惜しいところである。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史専門書
- 感想投稿日 : 2011年2月5日
- 読了日 : 2011年2月5日
- 本棚登録日 : 2011年2月5日
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