いやでも楽しめる算数 (講談社文庫 し 31-35)

著者 :
  • 講談社 (2004年12月1日発売)
3.26
  • (4)
  • (18)
  • (44)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 217
感想 : 19
4

そのp52〜55を抜粋します。

この連載がもうじき始まりそうだという頃、私は算数をどう書こうかと、あれこれ考えていた。そしてその頃、たまたま家に原稿取りやインタビューなどでやってきた編集者たちに、ひとつの質問をしてみた。その質問とは、割り算ってどういう意味のことなのか言ってみてください、というもの。

たとえば、10割る2、というのは、どういう意味ですか、ときいたわけだ。
5人くらいの編集者に同じことをきいてみたところ、なんと全員が、ほぼ同じような答をした。

10個のみかんがありまして、なんてことを言う。それをニつに分けると、1組が5個になります。

2人で分けると、1人分が5個、と言った人もいた。

10センチの厚さのヨウカンを持ち出した人もいる。それを等しい大きさにニつに切ると、1切れの厚さが5センチです。

みーんな、割る2、をニつに分ける、と考えるのだった。

そこで私が、割り算にはもうひとつ意味があるんですけど、それは思いつきませんか、ときくのだが、誰も答えられない。

読者のみなさんはどうですか。割る2、はニつに分ける、ですか。割る3は、三つに分ける、という意味だけですか。

割り算には実はニつの意味があるのである。

割る2は、二つに分ける、もひとつの意味であって間違ってはいない。しかし、もうひとつの割り算の意味を忘れてはいけないのだ。

10割る2、には、次のような意味もある。

10個のみかんがあって、1人に2個ずつあげるとしたら、何人分あるか。

 10÷2=5

5人分あるわけだ。

つまり、10の中に、2は何個あるか、というのが、割り算のもうひとつの意味であり、実はこっちのほうが重要だと言ってもいいくらいなのだ。

それを忘れて、10割る2を、二つに分けるとばかり考えている人は、10割る1/2で考えにつまるのである。

10を、1/2に分ける。

なんや、それ。1/2に分けるって、どういうことなんだ。

割る1は、一つに分けるってことで、つまり分けないってことで、もとの10のまま。それはよい。

しかし、割る1/2だ。これはいったい、どういうふうに分けるということなのか。

頭の中にさっぱりイメージが浮かばないのである。

ところが、割り算のもうひとつの意味がわかっていれば、割る1/2のイメージがちゃんと浮かぶ。

 つまり、10の中に1/2は何個あるか、とテキは言っておるわけなのだ。
1の中に、1/2は2個ある。

 1÷1/2=2

10の中には…10÷1/2=20だ。そうだったのだ。これこそが分数の割り算をする時に分母と分子を逆さまにして掛けるってことの理由なのである。
1の中に2/3は、1個半ある。

1÷2/3=1×3/2=3/2.

つまりこれは、1の中に1/3は3個あるけど、2/3なんだからその半分しかないよなあ、と考えて2で割っているのである。

1÷2/3=1×3÷2=1×3/2=3/2.

だから、6の中に2/3がいくつあるかと考えてみると、

6÷2/3=6×3/2=18/2=9.

ということをみんな機械的にやっていたのだ。

このように、分数の割り算も、割り算のもうひとつの意味、Aの中にBは何個あるか、で考えていくとくっきりと理解できるのである。
なのに私が質問してみた編集者は、全員がそっちの意味を忘れていた。これは、編集者になるような人は、どちらかと言うと文科系の人であることが多い、からなのかもしれない。

そしてまた、割る2という言い方のせいで、ついついニつに割る、をイメージしてしまうという習慣になってしまうのかもしれない。つまり、割り算、という名称がそもそも、数を割っていく、という感じを与えるのかも。

これを読んだ人は今後、割り算にはニつの意味があるってことをしっかりと認識していっていただきたい。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2007年7月3日
本棚登録日 : 2007年7月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする