ほんとうの多様性についての話をしよう

  • 旬報社 (2022年6月16日発売)
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感想 : 12
5

太郎次郎社エディタスのサイトで木下理仁さんとの対談があり、それ経由でサンドラさんのことを知りました。
https://www.editus.jp/archives/5473
この対談、ものすごく考えさせられる。
というか、耳が痛すぎる。
耳が痛すぎて、痛すぎて、正直苦痛。
でも、何度も繰り返し読み返したくなる。
でまた、何度も繰り返し読んでは頭がビリビリしびれる。
そんな苦痛の反復の中で、気付かされるんです。

自分の中にはまだまだ見慣れぬ他者に寛容になれないこわばった「体質」があるんだなぁ、と。
人とフラットに付き合うには、まだまだ自分の中に壁があるんだなぁ、と。

この本を買ったのは、こう言ってよければ、そういう頭がしびれるような苦痛の中にもっとどっぷり浸りたくなって、なんです。
頭がしびれて苦痛を覚えるくらい、
「あなたは何者なんですか?」
と問われないと気づけないことが、少なくとも私にはいっぱいある。
国籍のこともそう。思えば、宗教や精神障害やセクシュアリティのこともそうでした。自分ごとになって初めて気付かされたことばかり。
そして、気付かされて初めて自分と向き合えた。
問われる苦痛と、問われて初めて見えた自分の姿をしっかり目を逸らさずに見つめる苦痛と、両方受け入れて、「だからこそ……」と何かを紡ごうとする。そういうところの勇気こそが、私を鍛えてくれる。そう信じてます。

これまでいわゆる「ハーフ」の方の違和感や抱えている困難については、知らなかったばかりか、私も沢山誤解をしていたように思います。
“見た目が外国人風”というだけで無理に英語で話しかけてみようとして、結果引き気味に日本語で返されたことは自分にも覚えがあります。今思い返しても恥ずかしい。
また、列車に乗っていたとき偶々近くにいた白人系の輩に英語で
「よぉ、キム」
と面倒くさい絡まれ方をして苦笑いをしてしましたが、その時思ったのも
「こいつら、韓国人と中国人と日本人の区別がつかないって本当だったんだな……」
というところでした。
サンドラさんがこの本で言うように、そもそも怒りを向けるべき矛先はそこじゃないのにもかかわらず、です。

見慣れぬ他者という存在がある。
じゃあ、あの人たちの存在から何が自分に問われているのか?

こういう思考回路は、誰にでも形成できるわけではないらしい。
ある人を観察すると「歳を取ると難しくなるのかな」とも思えるし、ある人を観察すると「立場が上に行くほど難しいのかな」とも思えるけれど、それなりの立場を持って良い歳の重ね方をした人はしっかり出来ているのも事実で、結局のところ
「何か問題を抱えたとき、自分と向き合ういいきっかけとして問いを問いのまま考え続けてきたか、さっさと(答えになってない)答えを出して問題から逃げ続けてきたかどうか」
というところに暫定で落ち着いてはいます。でも、これもまたある側面だけを見ての考えなんでしょうね。

――「多様性って、そもそも必要なの?」ではなく「どうやったら多様な社会になるの?」と問い続けることが、今、一人ひとりに求められていると思います。(p.204)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年7月4日
読了日 : 2022年7月4日
本棚登録日 : 2022年6月17日

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