死を生きながら イスラエル1993-2003

  • みすず書房 (2004年4月21日発売)
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感想 : 2
5

[癒しよ、何処に]1993年のオスロ合意から2003年のジュネーヴ合意に至るイスラエルとパレスチナの10年を精緻に観察した作品。和平への希望と、それが潰えることへの絶望との間に揺れる筆者、そしてそれぞれの世論の動きが感じ取れる作品です。著者は、エルサレムに生まれ、自らを左派の活動家とも称している作家、デイヴィッド・グロスマン。訳者は、原著を一読して没頭したという二木麻里。原題は、『Death as a Way of Life』。


略年表にして駆け抜けてしまうと、絶対に知り得ない、感受し得ない当時のなまなましい思いが凝縮されています。グロスマン氏は二国家解決を唱え、右派と呼ばれる人々の対パレスチナ政策に関して一貫して批判的な方なのですが、その立場に立脚する者ですらも、テロや暴力の連鎖の影響からは逃れられないんだなと(それ自体、その恐怖の中にある人からすれば当然と言われてしまうことなのかもしれませんが)感じました。

〜この戦闘は、イスラエル人とパレスチナ人とのあいだでおこなわれているのではない。絶望に甘んじない人びとと、絶望を自分の生き方にしようとする人びとの間でおこなわれているのである。〜

「そのとき」に足を踏み入れることができる貴重な一冊です☆5つ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年6月30日
読了日 : -
本棚登録日 : 2016年6月30日

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