医療の限界 (新潮新書 218)

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  • 新潮社 (2007年6月20日発売)
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感想 : 44
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「医療崩壊」の新書版。医療問題の本というより思想書として興味深く読んだ。特にオルテガの引用のくだりは、医療現場のみならず、現代日本の病理を如実に示しているようで、慄然とした。

大衆は、「文明の利点の中に、非常な努力と細心の注意をもってして初めて維持しうる奇跡的な発明と構築を見て取らない」、故に「自分達の役割は、それを生得的な権利であるがごとく、断固として要求することにのみあると信じる」。

安全も平和も決して当たり前のことではない。自分の知らない所で誰かが汗や血を流し、かろうじて現状が維持されているのだ。そういうことに人々が思いを馳せることができなくなった時、システムは崩壊への道を辿るのだろう。せめて崩壊を加速させないために、今の自分にできることは、学ぶことしかない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文科学
感想投稿日 : 2008年11月10日
読了日 : 2008年11月10日
本棚登録日 : 2008年11月10日

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