小倉昌男 経営学

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経営関連では名著と呼ばれる本。
小倉元社長がヤマトの歩みを説明する構成だが、マーケ・商品開発・設備投資・組織運営などのテーマごとに経営手法とその工夫が示されていて、300ページとは思えない読みやすさであった。
20年前に書かれた本ではあるものの今見ても色あせておらず、世の中の不を改善しかつ儲ける方法を練り、できると思ったら腹をくくってトップダウンでやりきる、周りからの反対意見があっても屈さない、というのはまさにイノベーターの思考であり、今の時代にもそのまま活かせる経営手法だなと感じた。特に、宅急便事業構想を、既存事業のディスラプトを厭わずに実行しきったシーンなどは文章にも鬼気迫るものがあり、引き込まれた。

評判に惑わされずフラットな気持ちで読み勧めたが。「経営学」という書名とその評判通り、経営に必要なエッセンスがたくさん詰まった名著だと感じた。

メモ
・定期便配送が当たり前だった時代において、個人間配送の重要性を唱えた(当時行っていたのは郵便小包のみ)
・元々は何でも運べる良いトラック会社を目指していたが、吉野家の集中戦略を見て、ヤマトの得意分野である小さな荷物への集中を決意した。
・個人間配送に進むことのデメリットはあったが、「それを抑える方法を考え。工夫し実行するのが経営者の役割だ」という思いからリサーチ、マーケ、ビジネスモデルを考えていった。
・新事業のコンセプトを「宅急便開発要綱」を自分で書き、役員会で提案するなどトップダウンで進めた。
・主婦というペルソナにとことん合わせた商品設計。
・「翌日配送」という商品を作るために配送ネットワークを広げ、「最初は赤字でも流通量を増やせば黒字に向かう」というシナリオに腹を括って、既存事業をディスラプトすることも厭わずに投資を押しすすめた。
・旅行業界など、他業界同ペルソナの事業からヒントをえた。
・「サービスが先、利益は後」という考え方の徹底。PF戦略における鉄板ともいえるネットワーク外部性の醸成を、自らのセンスで進めた。サービスを提供する供給者の論理と、利用者の論理は正反対ということを理解し、利用者の論理に合わせる方法を考えた。
・運転手をサービスドライバーとしょうし、最も大切にする顧客に最も近い存在としてのプライドを刺激した。
・ネットワークを活かした次の一手を常に考え続けた。ファクタリングのサービスや、スキー便、クール便など

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年4月19日
読了日 : 2020年4月18日
本棚登録日 : 2020年4月12日

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