裁判官が和解技術を論ずる。当時は,このこと自体,一種センセーショナルだったのではないか。著者の言う「判決派」が裁判官のマジョリティだったということもあるが,裁判官が外部に手の内を晒すという意味でも,大きな決断が必要だったのではと思う。
実は本書はタイトルだけでアマゾン購入しており,弁護士向けだと思い込んでいた。開いてみると裁判官の和解勧試についての本で,正直失敗したと思った。しかし,読んでみると弁護士にとっても非常に参考になる。それは,著者が和解を当事者の自主的紛争解決機能を重視する「交渉型」と捉えているからである。間に裁判官が入るかどうかは異なれど,当事者同士の交渉によって和解が成立するのは,訴訟上外で変わりはない。本書で紹介される具体的な和解案の類型は,訴訟外の和解交渉でも頭に入れておく必要がある。単に足して2で割るのではなく,人間心理を踏まえた主観的公平性が,和解成立のカギなのだ。
ともすると,単に判決を回避するためと思われがちな和解について,裁判官としてここまで踏み込んで取り組まれる姿勢は素晴らしい。こういう裁判官が増えるといいなぁ。
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- 感想投稿日 : 2010年11月23日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2010年11月23日
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