よふかしのうた (10) (少年サンデーコミックス)

著者 :
  • 小学館 (2022年2月18日発売)
4.17
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本棚登録 : 573
感想 : 11
5

 直前に9巻を読み返していたお陰か、大筋は予想の範疇だったものの、ディティールの詰め方が凄く良かった。やっぱり感情にフィーチャーした作品って好きだなぁ、と改めて思う。
 より正確に言うなら、予測できたのは大筋というより、今後大体どういう方向に話が流れていって、誰にフィーチャーされるのか、という部分なので、「夜を消す」の真意は納得と同時に驚きもあったし、その他でも「そう来たか」と思う展開は多かった。大きな話がクライマックスを迎えるというだけあって、満足できた、というか、まだまだ感情の描写をほぐしてしゃぶり尽くしたいという気持ちになった。

 ネタバレしないと書き切れない部分も多いので、細かい点はコメントで触れる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年3月4日
読了日 : 2022年3月4日
本棚登録日 : 2022年3月4日

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コメント 1件

ヤヌスさんのコメント
2022/03/04

ネタバレします。





 9巻を読み返したことで予測がついていた、というより展開として期待していたのは、誰かキョウコの父親を吸血鬼にしたのかが明かされること、そしてそれが話の主軸になっていくのではないか、ということ、何よりもひょっとして星見キクがその吸血鬼なんじゃないのか、ということだった。他の吸血鬼たちと比べて眷属の数も多いし、他の吸血鬼とはやや毛色の違った印象があったからだ。ただ、その後キクが登場する辺りをめくっていたら、普通にキョウコがキクに執着している様子が描かれていたので、忘れていただけできっちり伏線は張られていたのだと気づいた。
 それゆえ、次に話がそちらにシフトするだろう、という漠然とした予感は当たったものの、「夜を消す」が単に自分の死を指すのではなく、それでもって(あまり現実的ではないにせよ)吸血鬼を遠回しに殺そうとしていたことや、それが遠回しの自殺でもあり、ひょっとすると八つ当たりじみた行動だったかも知れないことなど、それが複雑な要因が結びついて起こしたアクションだった、という部分には凄く感じ入った。コウが一瞬だけ吸血鬼になったのにも、素直に驚いた。
 あまり効果のない絶滅手段を取ったことに関しては、本編で言うように、本当に根絶を狙っていたというよりは、遠回しの自殺としての意味合いの方が強かったんだろうけど、個人的にはそれより更に八つ当たりとしての側面が強かったように感じた。というより、そうだと好みだな、と。
 大人が子供の延長だ、という話は好きだったし、吸血鬼殺しに10年間を捧げて来た結果、子供のまま大人になって、その目的も絶えたことで人間的な弱さを見せるキョウコも好き。他にも台詞の端々が今回は良かった。
 今回残った疑問は3つ。まず、「夜は静かな方が良い」という言葉からは、単に吸血鬼を根絶したい(=自殺や復讐、八つ当たり)というより、キョウコも夜の空気が好きで、自分の理想のそれを作り出したい、と考えていたようにも取れる。吸血鬼がいない静かな(=穏やかな)夜、というのではなく、その存在が周知されることによって、普通の人もいなくなった夜が欲しかった、という風に。この点はどうなんだろう。これまでの話を読み返せばヒントはありそうだけど。
 次に、なぜキクの名前まで分かっていて、真っ先に殺しにいかず、その前に根絶を始めたのか。キクを襲撃しなかったことに関しては、足取りがつかめないとか、何よりまだ弱点を見つけていない、ということが考えられるし(描写あったかも知れないし)、そもそもキョウコの今回の計画自体が、再三言うように色々な感情が絡み合ったものな訳だから、ずばっと答えは出ないかも。
 そして最後に、一瞬の高ぶりで吸血鬼になれるのなら、恋が冷めたら人に戻るのか?ということ。これは追求されるかも知れない。
 何にせよ、面白かった。

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