登場人物の暗い部分と明るい部分それぞれの温度感がとてもはっきりしていて本当に気持ちよく読めました。心から冷えてしまうような背景や復讐、心温まる2人の関係性。登場人物の温度感の違いは明確なのに世界がどこまでも寒色で彩度の低くみえる。高3あたりで三秋縋さんの作品にはじめて触れて以来、この温度感が自分にはとても心地よいものとして感じられて救いとなっています。
読んでいて想像したのは映画レオンでした。マチルダの最後を思うと本作の結末後の登場人物はこうかもしれないとか考えてしまいます。ただ、2人は2人だけの人生の落とし穴に落ちているのでそこを勝手に脚色するのは野暮だなとすぐ思考を止めてしまいます笑。
そのかわりに、自分が今嵌っている人生の落とし穴や泥沼のなかで微笑んでいられるような何かを探すことにしています。そう思えるのも本作があまりにも美しくどうしようもないせいであり、まさに醜いあひるが醜いあひるのまま幸せになれる希望や模範を感じさせてくれる作品だからだと思います。どうしようもないとき、救済がほしいときに自分のような後ろめたい気持ちでいっぱいの人にオススメの作品です。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年11月1日
- 読了日 : 2023年11月1日
- 本棚登録日 : 2023年8月30日
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