昭和十七年、徴兵検査を受け、出兵を控えた武良茂(水木サンの本名)の苦悩。
武良茂はキリスト教や、仏教、ニーチェなどの哲学や宗教思想の本のなかに答えを求めた。死を意識した二十歳の青年の手記。
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荒俣宏さんの濃厚な時代解説のおかげで、戦前や戦時中の学生たちがどのように本を選び、どのように読み込んだかがわかった気がする。
日記を書く行為、天気を書き残す行為についての考察も大変興味深かった。
もちろん自分が二十歳のころは戦時中ではなかったから、ここまで死を意識することはなかった(まったくなかったわけではないけど)。
苦である現実を生きることは戦いで、休息を意味する死は幸福、そして戦っているうちに苦しみは幸福に変わる、なんて当時の自分は考えもしなかった。何かあるたびに悟ったような気分になっていたけれど、本当の悟りっていうのはこういう思想なんだと思う。
哲学も宗教もいいけど、もしかしたら答えは自然のなかにあるのかもしれない。ニーチェや水木サンが重視した自然学。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
水木しげる
- 感想投稿日 : 2021年7月26日
- 読了日 : 2021年7月25日
- 本棚登録日 : 2021年7月25日
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