(01)
映画「もののけ姫」にまつわる証言,インタビュー,論考などがまとめられている.特に大塚英志の「『もののけ姫』解題」が特筆(*02)される.製作にたずさわった鈴木敏夫氏の証言が示すように,この作品は(日本の)映画史としても画期にもなっており,また技術面でも,アニメに変革をもたらしたプロジェクトでもあっただろう.
21世紀の現在から見たとき,「もののけ姫」は,宇野常寛氏がいうように「生きろ。」のウザさをいまだ持ち得ているだろうか.映画内の人物が動き回り,映画内の彼女ら彼らを動かすために映画づくりの仕事として動き回り,アニメーションが持ち得たそうした熱量は,ウザい感覚も誘発しつつ,本書から伝わるところもあるだろう.
(02)
この映画と同時代的なオウム真理教や村上春樹に対する距離感は,大塚が指摘するように気に掛かるところでもある.果たして,この作品は,歴史や社会と向き合ったものであっただろうか.ファンタジーやアニメーションにそれを求めるのは酷であろうか.そうした問題も大塚の解題には示されている.
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年2月7日
- 読了日 : 2024年1月6日
- 本棚登録日 : 2023年10月17日
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