平行植物 (ちくま文庫 れ 1-1)

  • 筑摩書房 (1998年12月1日発売)
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本棚登録 : 222
感想 : 24
4

(*01)
平行という世界の形容にピンとこない読者も多いかもしれない。ありえたかもしれない世界、すなわちパラレルワールドとこの世界をつなぐ植物たちの物語といった副題を添えたいところでもある。
触らせてくれない、撮らせてもくれない、暗がりにあった方が美しい、生きているか死んでいるかも分からない、黒かったりメタリックだったりする、といった様々で天邪鬼な平行植物の特色は、どこかグラビアアイドルのようなオーラを放ち、これらの植物と読む者との間に一定の距離を置いている。
その距離に、曖昧さ、表裏、気体、透明、芸術、伝説、風俗(*02)が入り交じり、臆説が飛び交う。平行植物の各種の発見から採集、撮影、保管、展示に至る科学的蘊蓄は、20世紀までに科学が到達した地点からの知的な批評たりえる。要するに科学的な視点を小馬鹿にしていて、胸がすくような面白さがある。

(*02)
世界各地の風俗や風土も戯画化されていて笑える。現実の気候、地勢、植生、民俗などを織り込んまれたもっともらしいレポートとあるあるエピソードが伝えられ、その中に平行植物が点綴される様は、現代芸術的でもある。平行植物は、植物である点では環境という文脈に適合しているべきであるのに、どこか文脈や環境から浮遊している感覚は、優れて批評的である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: landscape
感想投稿日 : 2016年10月1日
読了日 : 2016年10月1日
本棚登録日 : 2016年6月10日

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